企業型確定拠出年金で「だまされる」と言われる理由は?5つのリスクとメリット・賢い運用法を解説

会社の制度で「企業型確定拠出年金(企業型DC)」に加入したものの、「だまされるな」という言葉を見て不安になっていませんか。
あるいは、内容をよく理解しないまま放置しているかもしれません。
この記事では、なぜ企業型DCが「だまされる」と言われるのか、その背景にある5つの具体的なリスク(罠)を徹底的に解説します。
さらに、そのリスクを回避し、企業型DCが持つ強力な税制優遇を最大限に活かすための賢い運用方法まで、4つのステップで紹介します。
制度を正しく理解し、「放置して損する」側から「賢く活用して得する」側になるために、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?基本を正しく理解

企業型DCに加入しているけれど、そもそもどんな制度なのかよくわからないと感じていませんか。
「だまされる」という不安の多くは、制度を正しく理解していないことから生まれています。まずは基本を押さえることで、漠然とした不安を解消できます。
ここでは、企業型DCの基本的な仕組みを確認していきましょう。
- 企業型DCとは?制度の目的と掛金の拠出方法
- 選択制DCとマッチング拠出の違い
制度の全体像を理解すれば、ご自身にとって本当に必要な対策が見えてきます。
企業型DCとは?制度の目的と掛金の拠出方法
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が従業員のために掛金を拠出し、従業員自身がその資金を運用して老後資金を準備する制度です。
従来の確定給付年金(DB)と大きく異なる点は、将来受け取る金額が保証されていないことです。確定給付年金は企業が運用リスクを負い給付額を保証しますが、企業型DCでは従業員自身の運用成果によって受取額が変動します。
掛金の拠出方法には、主に3つのパターンがあります。
| 拠出パターン | 概要 |
|---|---|
| 1. 企業拠出のみ | 会社が掛金の全額を拠出する基本的な形 |
| 2. マッチング拠出 | 会社の掛金に加えて、従業員も給与から掛金を上乗せする |
| 3. 選択制DC | 従業員が「給与として受け取る」か「DCの掛金として拠出する」かを選択する |
【2025年改正】掛金上限が月額6.2万円に引き上げ
2024年の法改正により、2025年から企業型DCの掛金上限が引き上げられます。これまで月額5.5万円だった上限が、月額6.2万円へと拡大されます。
他の企業年金(DBなど)と併用する場合は、他制度掛金相当額を控除した額が上限となります。具体的な金額は、実施している制度の内容によって異なります。
| 制度の組み合わせ | 2024年まで(従来) | 2025年から(改正後) |
|---|---|---|
| 企業型DCのみ | 月額 5.5万円 | 月額 6.2万円 |
| 企業型DC + DB(他制度)併用 | 月額 2.75万円 | 他制度掛金相当額を控除した額 |
他の企業年金(DBなど)と併用する場合は、他制度掛金相当額を控除した上限となります。具体的な金額は、実施している制度の内容によって異なります。
この改正によって、企業型DCのみを利用する場合、年間で最大8.4万円多く拠出できるようになりました。拠出額が増えれば、その分だけ節税効果も大きくなります。
選択制DCとマッチング拠出の違い
選択制DCとマッチング拠出は、どちらも従業員が拠出額を増やせる仕組みですが、性質が異なります。
マッチング拠出は、会社の掛金に、従業員が「上乗せ」して自身の給与から拠出します。
一方で、選択制DCは、本来給与として受け取るお金の一部を「給与」で受け取るか「DCの掛金」として拠出するかを決めます。
| 項目 | マッチング拠出 | 選択制DC |
|---|---|---|
| 掛金の扱い | 給与から「上乗せ」で拠出 | 給与の一部を「振替」で拠出 |
| 税制メリット | 拠出額の全額が所得控除 | 掛金分は給与とみなされず非課税 |
| 社会保険料 | 影響なし(給与は変わらない) | 掛金分は対象外となり、社会保険料が減少する |
| 将来の年金 | 影響なし | 将来の厚生年金額がわずかに減少する可能性がある |
マッチング拠出は、拠出額が全額所得控除の対象となります。
選択制DCは、掛金にした分だけ社会保険料の計算対象から外れるため、厚生年金や健康保険料の負担が減ります。
しかし、社会保険料の納付額が減るということは、将来受け取れる厚生年金の額もわずかながら減少する可能性があるため注意が必要です。
「企業型確定拠出年金にだまされるな」と言われる5つの理由

「企業型DCはだまされる」という言葉を目にして、不安になっていませんか。
確かに企業型DCにはいくつかのリスクがありますが、それらは知識があれば回避できるものばかりです。まずは、どんな「罠」があるのかを正しく知ることが大切です。
ここでは、企業型DCが「危険」と言われる5つの理由を見ていきましょう。
- 60歳まで引き出せない
- 元本割れやインフレで資産が目減りする
- 手数料で資産が目減りする
- 商品や運営機関を自分で選べない
- 転職時に手続きを忘れると自動移換で損をする
これらの「罠」を正しく理解すれば、企業型DCを安心して活用できるようになります。
1. 60歳まで引き出せない
企業型DCの資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。
これは老後資金を確保するための制度設計であり、急な医療費や住宅購入費が必要になっても、この口座の資産は使えません。
この「引き出せない」という不便さが、最大のデメリットとして挙げられます。
対策は、企業型DCの資金を「60歳まで絶対に使わない老後資金」と割り切ることです。急な出費に対応するための資金は、預貯金や新NISAなど、別の方法で準備する必要があります。
2. 元本割れやインフレで資産が目減りする
企業型DCは、将来の受取額が保証されていません。運用成果はすべて自己責任となるため、元本割れのリスクがあります。
「安全な元本保証型(定期預金など)を選べばよい」と考えるかもしれません。しかし、元本保証型を選んでも「手数料負け」や「インフレ負け」によって、資産が実質的に目減りする可能性があります。
例えば、定期預金の金利(年0.2%程度)より口座管理手数料のほうが高ければ、資産は少しずつ減っていきます。
長期の運用であれば、インフレに負けないために、適度にリスクを取って資産を育てる視点も大切です。
3. 手数料で資産が目減りする
企業型DCでは、目に見えにくい手数料があなたの資産から差し引かれています。
特に注意すべきなのが、運用商品ごとにかかる「信託報酬」です。
信託報酬は、資産を持っている限り毎日引かれ続けるため、長期の運用ではわずかな差が大きな違いを生みます。
例えば、毎月2万円を30年間、年利5%で運用したと仮定します。
信託報酬が年0.1%の商品なら資産は約1,170万円になりますが、年1.5%の商品では約920万円にしかならず、その差は約250万円です。
「会社が用意した商品だから」と無関心でいると、将来の資産を大きく損なう可能性があります。
4. 商品や運営機関を自分で選べない
企業型DCは、会社が契約した金融機関が提供する、限られた選択肢(3本から35本)の中から商品を選ぶ必要があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)のように、自分で金融機関や商品を自由に選ぶことはできません。
会社によっては、信託報酬が高い商品ばかりで、低コストの商品を選べないケースもあります。企業型DCでは、運営管理機関が提示する運用商品の中からしか投資先を選べません。
事業主やその親会社の関連企業が運用に関与するケースが多く、低コスト商品が選択肢に含まれない状況が生じる場合もあります。一方で、定期預金型や手数料が低めのインデックス型投資信託を選べる企業もあります。
信託報酬が高いほど最終的に得られるリターンが削られてしまうため、基本的に信託報酬は安いほうが望ましいでしょう。従業員自身も信託報酬を意識した投資選択を行うことが大切です。
対策は、その限られた選択肢の中で、最も信託報酬が低い商品を選ぶことです。あわせて、人事部門に「もっと低コストな商品を追加してほしい」と要望を出すことも大切な行動です。
5. 転職時に手続きを忘れると自動移換で損をする
企業型DCで最も危険で、多くの人が陥る罠が「自動移換」です。会社を退職・転職すると、原則6ヶ月以内に自分で資産の移換手続きをしなければなりません。
もし手続きを忘れて放置すると、資産は「国民年金基金連合会」に強制的に移されます。自動移換には、4つの恐ろしいデメリットがあります。
- 運用が完全に停止する
- 手数料だけ引かれ続ける(移換時4,348円+毎月52円)
- 加入期間にカウントされない
- 将来の手続きが面倒になる
2024年3月末時点で、自動移換の状態にある人は約129万人に上ります。そのうち資産を保有する人は約77万人です。
運用されない資産から毎月手数料が引かれ続け、資産は目減りしていきます。退職日が移換手続きの開始日だと心に決めて、すぐに手続きを始めましょう。
専門家プロファイルでは、ファイナンシャルプランナーの三島木 英雄さんが、以下のような質問に回答しています。
【質問(要約)】

42歳です。会社が企業型DCを導入しましたが、リストラの可能性があり数年以内の早期退職も考えています。途中退職すると60歳まで引き出せず手数料もかかり続けるため、加入すべきか、一時金で受け取るべきか悩んでいます。
【回答】

会社にて確定拠出年金が導入されるとのこと。数年前から確定拠出年金の導入は加速的に進んでおり今後も、公的年金の上乗せ及び会社の退職給付債務の減少として普及が進んでいきます。
良くあるパターンですと通常下記の選択を迫られます
・確定拠出年金に加入し毎月●万円積み立てる
・加入せず給与に上乗せして前払いとして毎月受け取る。
この際は、確定拠出年金のメリットは相当に高く仮に毎月5万円であれば年間60万程度の所得控除が作れる事と同じようなものですから、所得税が仮に20%とすれば住民税10%と合わせて60万×30%=18万程度の節税、及び社会保険料の等級が下がれば健康保険・厚生年金保料も後追いですが安くなります。先に貰ってしまうと給与所得になり手取りが落ちてしまいます。
ご質問の内容ですと
・確定拠出年金に加入して毎月●万円積み立てる
・退職時に一括で退職金を受け取る
という選択肢だと思います。これについても確定拠出年金にアドバンテージがあります。先に触れた、毎年の節税効果と社会保険削減が見込めるからです。
確定拠出年金も、将来受け取る時は「一時金」であれば退職所得控除が適用されますので、退職金の一時金受け取りと、制度でのデメリットはありません。年金で受け取っても公的年金の控除があります。
また、途中で退職された場合ですが、その際は個人型確定拠出年金で運用継続になる可能性が高いですが、その際は毎月の掛金は全額所得控除になり節税メリットは企業型よりも更によくなります。
個人型の場合ですと毎月の管理コストが不安でしょうが、月63円程度で管理する運営管理機関がありますのでそれほど心配いりません。
確定拠出年金の場合は60歳まで引き出せない事をご理解頂く必要があります。もしそれが可能であれば、税制的には確定拠出年金を利用された方が実質手取りは増える形となります。
ご参考になりましたら幸いです。
引用:専門家プロファイル|企業型確定拠出年金の加入(退職前提)
企業型DCには、本記事で解説したような注意点があるため、ご自身の状況に合わせて加入すべきか迷うケースも多いでしょう。
そんな時は、専門家に相談して個別の状況に合わせたアドバイスをもらうのがおすすめです。
企業型DCの3つの税制優遇とメリット

リスクばかり聞いて、企業型DCに本当にメリットがあるのか疑問に感じていませんか。
企業型DCには、他の金融商品にはない強力な税制優遇が用意されています。これらを正しく理解すれば、老後資金を効率的に準備できます。
ここでは、企業型DCの税制優遇とメリットを確認していきましょう。
- 拠出時の所得控除で手取りが増える仕組み
- 運用益が非課税になる複利効果の威力
- 受取時の退職所得控除・公的年金等控除
これらのメリットを活かせば、企業型DCは老後資金を作る最強のツールになります。
1. 拠出時の所得控除で手取りが増える仕組み
企業型DCの掛金は、全額が所得控除の対象となります。
これにより、その年の所得税や住民税が軽減されます。ご自身がマッチング拠出で上乗せする分も、全額が課税所得から差し引かれます。
例えば、年収500万円の人が毎月2万円(年間24万円)を拠出した場合、所得税10%と住民税10%を合わせた税率20%で計算すると、年間で約4.8万円の税金が軽減されます。
年収が高く税率が上がれば、節税額もさらに増えます。
実質的な負担を抑えながら、24万円の資産形成ができます。
2. 運用益が非課税になる複利効果の威力
企業型DCの口座内で運用して得た利益は、全額非課税となります。
通常の投資(課税口座)では、利益に対して約20%の税金が引かれますが、企業型DCではその税金がかかりません。
この「非課税」の力は、長期運用における複利効果(利益が利益を生む力)を最大化します。
毎月2万円を30年間、年利5%で運用した場合、課税口座(約1,514万円)と企業型DC(約1,716万円)では、その差額は約202万円にもなります。
参考:金融庁|NISAを知る
3. 受取時の退職所得控除・公的年金等控除
企業型DCは、60歳以降に資産を受け取る「出口」でも、大きな税制優遇が用意されています。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。加入期間が30年の場合、1,500万円までの受け取りなら税金がかかりません。
年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象です。
最も賢い方法は、一部を一時金、残りを年金で受け取る「併用」です。両方の控除枠を最大限に活用し、税負担を限りなくゼロに近づけることも目指せます。
その他のメリット
企業型DCには、税制優遇以外にも見逃せないメリットがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 資産保全 | 資産は会社の財産とは別に管理されるため、万が一会社が倒産しても全額保護される |
| ポータビリティ | 転職時に、転職先の企業型DCやiDeCoに資産を持ち運べる |
| 投資教育 | 一部の企業が、従業員向けに運用に関するセミナーや情報提供をしている |
専門家プロファイルでは、ファイナンシャルプランナーの森本 直人さんが、以下のような質問に回答しています。
【質問(要約)】

夫の個人型確定拠出年金(iDeCo)を放置していたら、毎年口座管理料が引かれていました。掛金の拠出再開を考えていますが、手数料を払ってまで続けるメリットがわかりません。税制優遇は大きいのでしょうか。普通の投資信託とは何が違うのか教えてください。
【回答】

はじめまして。ファイナンシャルプランナーの森本直人と申します。
ご質問の件、確定拠出年金(個人型)は、確かに税制優遇措置があり、掛け金の全額が所得控除できます。
ちなみに、所得税は、超過累進税率といって、所得の金額に応じて、段階的に税率が上がっていきます。
仮に、その方の高率負担部分が、20%の税率とすれば、ざっくりとした計算で、掛け金の2割が、所得税からその年にキャッシュバックされるイメージになります。(他に、翌年の住民税の節税効果もあります)
なので、ご主人の所得が高ければ、よりメリットが大きくなるといえます。
あとは、元々投資信託で長期運用を考えていた方にもメリットがあるといえます。
一方、そもそも値動きのある金融商品で運用する意思がないという方には、それほどメリットは大きくないかもしれません。
また、確定拠出年金は、あくまで年金制度なので、60歳以降にしか資金を使えません。
教育資金や住宅資金の積立(or住宅ローンの繰上げ返済資金)は、別途考える必要がありそうです。
それと、原則、給与からの天引きなので、勤め先の会社で実績がなければ、総務の方と相談しなければなりません。
その他にも、メリット、デメリット、色々ありますが、結局のところ、その方にフィットしているかどうかが重要です。
このため、ファイナンシャル・プランナーは、その方の収入や資産の状況、将来の夢・目標、リスク許容度、その他のご希望などなどを伺った上で、お一人お一人にあった、プランを提案しています。
希望するライフプランを実現しながら、百万円~のお金の流れの改善につながる可能性も十分にありますので、一度信頼のとれるファイナンシャル・プランナーにご相談されてみてはいかがでしょうか。
以上、ご参考になれば幸いです。
企業型DCの税制優遇メリットは強力ですが、ご自身の収入やライフプランによって最適な活用法は異なります。
今回の相談事例のように、ご自身の状況に合わせたアドバイスが欲しい場合は、専門家プロファイルでファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。
確定拠出年金節税効果シミュレーター
以下のシミュレーターを使って、確定拠出年金でいくら節税できるか計算してみてください。加入区分で企業型DCも選択できるため、月々の掛金に対してどのくらい節税効果が期待できるか計算できますよ。
ただし、計算された数値は、あくまでもシミュレーションであり、将来の節税効果や運用成果等を保証するものではない点にご注意ください。
確定拠出年金 節税効果シミュレーター
iDeCo・企業型DCの節税メリットを可視化
詳細内訳
掛金総額
¥0
運用益
¥0
最終資産額
¥0
適用税率(参考)
–
⚠️ 注意事項
- 計算された数値は、あくまでもシミュレーションであり、将来の節税効果や運用成果等を保証するものではありません。
- 本シミュレーションは給与所得控除を前提とした簡易計算を行っています。自営業・フリーランスの方は実際の税率と異なる場合があります。
- 本シミュレーションでは、社会保険料控除、各種所得控除等を簡易的に計算しています。
免責事項
本シミュレーションは投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、特定の商品の購入を推奨したり、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。確定拠出年金への加入や掛金額の決定は、ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本シミュレーションに基づいてお客様が損害を被ったとしても、当方は一切その責任を負うものではありません。
企業型DCに向いている人・入らない方がいい人の判断基準

企業型DCに加入すべきか、それとも慎重に考えた方がいいのか迷っていませんか。
企業型DCは強力な制度ですが、誰にでも適しているわけではありません。ご自身の状況やライフプランに合わせて判断することが大切です。
ここでは、企業型DCに向いている人と慎重に検討すべき人の基準を見ていきましょう。
- 加入をおすすめできる人の特徴
- 加入を慎重に検討すべき人の特徴
- よくある失敗談から教訓を学ぶ
ご自身に当てはまる条件を確認すれば、最適な判断ができるようになります。
加入をおすすめできる人の特徴
以下のような特徴に当てはまる人は、企業型DCのメリットを最大限に受けられます。
- 同じ会社で長く働く予定の人
- 年収が高めで、節税メリットを大きくしたい人
- 緊急予備資金(生活防衛資金)を別に確保している人
- 会社の福利厚生が手厚い(掛金が多い、マッチング拠出がある)人
- 投資に興味があり、ご自身で運用を学ぶ意欲がある人
加入を慎重に検討すべき人の特徴
以下のような状況にある人は、制度のデメリットがご自身のライフプランに影響する可能性があるため、慎重な検討が必要です。
- 2〜3年以内に転職や独立を予定している人
- 近い将来(5~10年以内)に住宅購入や教育費などで大きな支出を予定している人
- 投資リスクを一切取りたくない(元本割れを絶対に許容できない)人
- 選択制DCのデメリット(将来の厚生年金微減)を理解していない人
- すでに十分な老後資金があり、資産の流動性を優先したい人
これらの違いを理解して、加入するかどうかを検討するとよいでしょう。
よくある失敗談から教訓を学ぶ
企業型DCでよくある失敗は、主に3つです。これらの失敗から教訓を学び、ご自身の運用に活かしましょう。
| 失敗パターン | 内容 |
|---|---|
| 元本保証型100%での放置 | 「元本割れが怖い」と、すべての資産を定期預金などで運用し続けると、手数料やインフレに負けて資産が実質的に目減りする可能性がある |
| 高コストな商品の選択 | 内容をよく確認せず、信託報酬が年1.5%を超えるような高コストな商品を選んでしまうと、長期で大きな手数料差(損)が生まれる |
| 転職時の自動移換 | 最も深刻な失敗・転職・退職時に6ヶ月以内に手続きをせず、資産が塩漬けにされ、手数料だけ引かれ続ける |
これらの失敗を防ぐ鉄則は、「低コストな商品を選び」「年に1回は見直し」「転職時は6ヶ月以内に手続きする」の3点です。
専門家プロファイルでは、投資アドバイザーの荒川雄一さんが、企業型DCとiDeCoの選択に関する以下のような質問に回答しています。
【質問(要約)】

将来のためにiDeCoか企業型DCを始めたいのですが、会社から「企業型DCは残業が多いと給与が減る」と言われました。月2万円の拠出を考えていますが、どちらを選べば最終的にお得になるのか専門家の意見が聞きたいです。
【回答】

こんにちは!国際フィナンシャルコンサルタントの荒川雄一です。さて、ご質問拝見しました。
結論から言うと、加入できるのであれば、企業型を選ばれたほうが良いかと思います。総務のご担当者が言っている「残業が多いと企業型DCは給与が減る」の意味がよくわかりませんが、掛金は毎月一定額が引かれますので、残業代とは関係ないかと思います。
個人型と企業型の大きな違いは、社会保険料にあります。企業型の開始に迷われているという事は、「選択制確定拠出年金」を導入されているのかと思われますが、その場合、掛金は社会保険料の対象外となります。従って、所得控除で税金が下がるだけでなく、毎月引き落としされる社会保険料も下げられる可能性があります。社保の保険料が下がるため、将来もらえる年金額も若干下がる可能性はありますが、大抵のケースでは、メリットの方が多いと言えます。また、確定拠出年金の加入によってかかる事務手数料も、会社型であれば、会社負担となるので、加入できるのであれば、企業型にされたほうが良いと思います。ご参考としてください。
引用:専門家プロファイル|iDeCoか企業型DCか迷っています。
企業型DCに加入すべきかどうかは、会社の制度やご自身の働き方によって判断が異なります。
今回の事例のように具体的な疑問や不安がある場合は、一人で悩まず専門家に相談してみることをおすすめします。
iDeCo・新NISAとの違いを解説

企業型DCとiDeCo、新NISAはどう違うのか、どれを選べばいいのか迷っていませんか。
これらの制度にはそれぞれ異なる特徴があり、完璧な制度は存在しません。ご自身の目的や状況に合わせて使い分けることが大切です。
ここでは、企業型DCと他の制度との違いを確認していきましょう。
- iDeCoとの違い
- 新NISAとの違い
- 他の資産形成手段との違い
それぞれの特性を理解すれば、最適な組み合わせ方が見えてきます。
iDeCoとの違い
iDeCoは、企業型DCと並ぶもう一つの確定拠出年金制度です。iDeCoが「個人」で金融機関を選んで加入するのに対し、企業型DCは「会社」が導入する制度である点が最大の違いです。
| 項目 | 企業型DC | iDeCo(個人型) |
|---|---|---|
| 加入対象 | 制度を導入している企業の従業員 | 原則60歳未満のほぼすべての人 |
| 掛金拠出 | 主に企業(マッチング拠出で従業員も可) | 従業員(個人) |
| 運営機関 | 会社が選んだ金融機関 | 自身で金融機関を選択 |
| 口座管理手数料 | 会社負担が多い | 自己負担(年2,000円~5,000円程度) |
ご自身の会社が「マッチング拠出」を導入している場合、iDeCoとの併用はできません。コスト重視の場合は、手数料が会社負担のマッチング拠出を優先するのが基本です。ただし、投資したい商品を自由に選びたい場合は、iDeCoを選択する方法もあります。
iDeCoについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

新NISAとの違い
新NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。企業型DCとの最大の違いは「流動性」(お金をいつでも引き出せるか)です。
企業型DCは、拠出時(掛金)に所得控除がある代わりに、60歳まで引き出せません。新NISAは、拠出時の所得控除はありませんが、運用益は非課税で、いつでも自由に引き出せます。
| 項目 | 企業型DC | 新NISA |
|---|---|---|
| 目的 | 老後資金(60歳以降) | 自由(中期的な目標資金など) |
| 拠出時控除 | 掛金全額が所得控除 | なし |
| 運用益 | 非課税 | 非課税 |
| 引き出し制限 | 原則60歳まで不可 | いつでも可能 |
この違いから、「老後まで絶対に使わないお金」は企業型DCを最優先にし、「途中で引き出す可能性がある中期的な資金」は新NISAで準備するのが合理的です。
新NISAについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

他の資産形成手段との違い
個人年金保険や財形貯蓄と比べても、企業型DCの税制優遇は強力です。
個人年金保険にも所得控除はありますが、上限は年間で最大4万円です。企業型DCが掛金の全額(年間数十万円)を控除できるのと比べると、その差は歴然としています。
財形貯蓄(財形年金貯蓄)は、利息などが非課税になるメリットがありますが、拠出時の所得控除はありません。
参考:厚生労働省|財形貯蓄制度
自分に合った制度の組み合わせ方
大切なのは、これらの制度を「3層構造」で使い分けることです。資金の目的に合わせて、預け先を変えるイメージです。
| 資金の種類 | 推奨制度 |
|---|---|
| 老後資金(60歳まで使わない) | 企業型DC(+iDeCo) |
| 中期目標資金(10年~15年後など) | 新NISA |
| 短期資金(いつでも必要) | 普通預金(生活防衛資金) |
この3層構造で管理すれば、各制度のメリットを最大限に活かしつつ、バランスの取れた資産管理ができます。
損しないための賢い運用方法【4ステップ】

企業型DCで具体的にどう運用すればいいのか、何から始めればいいのか迷っていませんか。
投資に慣れていない方でも大丈夫です。基本的なステップを押さえれば、企業型DCで賢く資産を増やすことができます。
ここでは、損しないための4つのステップを確認していきましょう。
- 自分のリスク許容度と運用プランを見極める
- 初心者はインデックスファンドを中心に選ぶ
- 定期的にポートフォリオを見直す
- 手数料(信託報酬)を抑える
この4ステップを実践すれば、老後資金をしっかりと準備できるようになります。
ステップ1:自分のリスク許容度と運用プランを見極める
運用プランを見極めるには、まず自身がどれくらいのリスクを取れるか(リスク許容度)を知る必要があります。
年齢(運用期間)は重要な指標の一つです。20代や30代の方は、老後まで30年以上の運用期間があり、短期的な値下がりリスクを取れます。50代や60代になると運用期間は残りわずかなため、資産を守る運用に切り替えていきます。
ただし、同じ年代でもリスク許容度は個人差が大きいため、年齢だけでなく、家計状況や心理的なリスク許容度も合わせて確認することが大切です。
| 年齢(運用期間) | 株式(リスク資産)の割合(目安) | 運用方針 |
|---|---|---|
| 20代~30代 | 80% ~ 100% | 積極型:長期的な成長を最優先 |
| 40代 | 60% ~ 80% | バランス型:成長と安定を両立 |
| 50代~ | 20% ~ 60% | 安定重視型:徐々に守りを固める |
ただし、元本保証型が「絶対に安全」とは限りません。インフレによって、お金の実質的な価値が目減りする「最後のリスク」があることも覚えておきましょう。
ステップ2:初心者はインデックスファンドを中心に選ぶ
初心者が運用商品を選ぶ際は、低コストのインデックスファンドを中心に選ぶのが鉄則です。
インデックスファンドとは、市場の平均点(指数)に連動する運用を目指す商品で、信託報酬(手数料)が非常に低く設定されています。
もし商品選びに迷ったら、「全世界株式インデックスファンド」を100%選ぶだけでも十分です。これ1本で、世界中の株式に自動で分散投資ができます。
逆に、信託報酬が年1.0%を超えるような高コストな商品や、毎月分配型ファンドは、長期の資産形成には向かないため避けた方が賢明です。
ステップ3:定期的にポートフォリオを見直す
運用を始めたら、年に1回はポートフォリオ(資産の組み合わせ)を見直す習慣をつけましょう。
確認すべき点は、当初決めた資産配分(例:株式80%、債券20%)から、値動きによってズレていないかです。もし資産配分が大きくズレていたら、「リバランス(配分調整)」をします。
| リバランスの方法 | 概要 |
|---|---|
| スイッチング | 今保有している商品を売買し、元の比率に戻す |
| 掛金配分変更 | これから積み立てる掛金の割合を変更し、徐々に比率を戻す |
頻繁に売買する必要はありません。年に1回は最低限、ご自身の誕生日月などにDC口座にログインして確認しましょう。ただし、運用環境が大きく変わった場合は、その都度見直しを検討してください。
ステップ4:手数料(信託報酬)を抑える
賢く運用するために、手数料(信託報酬)を抑える意識を常に持ちましょう。わずか1%の差が、30年後には数百万円という大きな差になるためです。
手数料を抑えるテクニックは、商品選択で徹底的にコストをカットすることです。もしラインナップに信託報酬1.5%の商品と0.1%の商品があれば、迷わず0.1%を選びます。
また、不要な商品を複数持たず、シンプルな構成(例:全世界株式1本)にすることも、結果的に手数料を低く抑えることにつながります。
転職・退職時に必須の手続きと自動移換を防ぐ対策

転職や退職する際、企業型DCの資産をどうすればいいのか不安に感じていませんか。
実は、企業型DCで最も多い失敗が「転職・退職時の手続き忘れ」です。
ここでは、転職・退職時に必須の手続きを確認していきましょう。
- 転職・退職時の企業型DC資産の取り扱い方
- 自動移換のデメリットと放置が危険な理由
- iDeCoへの移換手続きの流れと注意点
- 受け取り方(一時金・年金)と税金の基礎知識
正しい手続きを理解すれば、ご自身の資産を確実に守り、損をすることなく次のステージに進めます。
転職・退職時の企業型DC資産の取り扱い方
会社を退職すると、企業型DCの加入者資格を失います。原則として、退職日の翌日から6ヶ月以内に、ご自身の資産を次のいずれかの制度に移換する手続きが必要です。
| 転職・退職後の状況 | 選択肢 | 手続き期限 |
|---|---|---|
| 転職先にも企業型DCがある | 転職先の企業型DCに資産を移換する | 6ヶ月以内 |
| 転職先に企業型DCがない | iDeCoに資産を移換する(新規加入) | 6ヶ月以内 |
| 自営業・専業主婦(夫)になる | iDeCoに資産を移換する(新規加入) | 6ヶ月以内 |
| 手続きを忘れて放置 | 自動移換(国民年金基金連合会へ) | 6ヶ月経過後 |
最も良い選択は、転職先に企業型DCがあれば、そちらの口座に資産をまとめることです。ない場合は、ご自身でiDeCo口座を開設して資産を移換します。
自動移換のデメリットと放置が危険な理由
6ヶ月以内に手続きをしないと、資産は強制的に「自動移換」されます。これは、資産が塩漬けにされる状態です。
自動移換されると、運用が完全に停止するうえ、手数料だけが引かれ続けます。例えば、資産300万円を5年間放置すると、手数料(約7,500円)と機会損失(年利5%なら約82万円)で、大きな損害となります。
参考:厚生労働省|第38回社会保障審議会企業年金・個人年金部会 参考資料2
iDeCoへの移換手続きの流れと注意点
転職先に企業型DCがない場合、iDeCoへの移換手続きが必要です。手続きには時間がかかるため、退職前から準備を始めましょう。
iDeCoへの移換には、以下の5つのステップを踏む必要があります。
| 内容 | 補足 |
|---|---|
| 金融機関を選ぶ | 手数料や商品ラインナップで比較 |
| iDeCo口座を開設する | 審査に1〜2ヶ月かかる |
| 移換手続き書類を提出する | |
| 資産移換を待つ | 現金化され移されるまで2〜3ヶ月かかる |
| 運用商品を選択する | iDeCo口座で運用を再開 |
すべての手続きが完了するまで数ヶ月を要するため、退職が決まった時点で準備を始めるのが賢明です。
受け取り方(一時金・年金)と税金の基礎知識
企業型DCの資産は、60歳以降に受け取る際も税制優遇が受けられます。受け取り方は、「一時金」「年金」「併用」の3パターンから選べます。
| 受取方法 | 特徴 | 税制優遇 |
|---|---|---|
| 一時金 | 一括で受け取る | 退職所得控除 |
| 年金 | 分割で受け取る | 公的年金等控除 |
| 併用 | 一部を一時金、残りを年金で受け取る | 両方の控除を適用 |
最も税負担を軽くできる可能性があるのは、両方の控除枠を活かす「併用」です。
例えば、資産が2,000万円(加入30年)ある場合、退職所得控除枠の1,500万円を一時金で受け取り、残りの500万円を年金(10年分割など)で受け取れば、税負担を最小化できます。
専門家プロファイルでは、研究員の大泉 稔さんが、以下のような質問に回答しています。
【質問(要約)】

企業型DCのある会社を退職し、iDeCoへの移換が必要になりました。しかし、現在の資産額や今後の掛金を考えると、元本割れリスクや税制優遇のメリットが少ないと感じます。手数料を考えると、移換しない方が得なのではないかと悩んでいますが、どうすべきでしょうか。
【回答】

ご質問ご利用ありがとうございます。
確定拠出年金の脱退一時金の要件を満たしていますか?もし、満たしているのでしたら、脱退一時金を受け取った方が良いかもしれません。しかし、その要件は、ケッコウ厳しいです。以下の全てを満たしている必要があります。
・企業型DCおよびiDeCoの加入者でも運用指図者でもないこと
・資産額が1.5万円以下であること
・最後に企業型DCの資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6カ月を経過していないこと
もし、脱退一時金の要件を満たしていないのでしたら、移管して、個人型確定拠出年金の加入者(掛金を拠出し、運用する)か、運用指図者(掛金を拠出せず、運用のみを行う)の、いずれかを選ぶ必要があるでしょうね。
参考になれば幸いです。
大泉稔
転職や退職時の企業型DCの手続きは、個々の状況によって最適な選択が異なります。今回のように、iDeCoへの移換に迷う場合も、専門家に相談することでご自身の状況に合った的確なアドバイスを得られます。
企業型確定拠出年金に関するよくある質問

企業型拠出年金に関するよくある質問に回答します。
原則として、60歳になるまで解約(脱退)することはできません。企業型DCは、あくまで老後の資産形成を目的とした制度だからです。
ごく例外的に、いくつかの厳しい条件をすべて満たした場合のみ「脱退一時金」として受け取れますが、該当するケースは非常にまれです。企業型DCは「60歳まで引き出せないお金」と割り切ることが大切です。
会社が倒産しても、あなたの企業型DCの資産は全額保護されます。
資産は会社の財産とは法律で完全に区別され、信託銀行などで「分別管理」されているからです。あなたの資産が差し押さえられたりする心配は一切ありません。
ただし、ご自身で、転職先の企業型DCやiDeCoに資産を移す手続きは必ず必要です。放置すると「自動移換」になってしまいます。
はい、運用商品はご自身の判断でいつでも変更できます。
変更の方法には、主に2種類あります。
| 変更方法 | 概要 |
|---|---|
| スイッチング(預け替え) | 今保有している商品を売却し、別の商品を購入する |
| 掛金配分変更 | これから積み立てる掛金で購入する商品の割合を変更する |
ただし、日々の値動きを見て頻繁に売買を繰り返すことはおすすめしません。年に1回、資産配分を確認し、必要に応じて見直す程度で十分です。
いいえ、マッチング拠出とiDeCo(個人型確定拠出年金)を同時に利用することはできません。ご自身の会社がマッチング拠出制度を導入している場合、どちらか一方を選ぶ必要があります。
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo(企業型DC加入者の場合) |
|---|---|---|
| 口座管理手数料 | 会社負担(実質無料) | 自己負担(年2,000円~5,000円程度) |
| 商品ラインナップ | 会社のDCで決められた商品 | 自身で選んだ金融機関の商品 |
基本的には、マッチング拠出を優先するのがおすすめです。iDeCoは手数料がご自身の負担になりますが、マッチング拠出なら手数料が会社負担のままだからです。
いいえ、年収が低めの方でも、企業型DCのメリットは十分にあります。
確かに、掛金が全額所得控除になる「節税メリット」は、高年収の方ほど大きくなります。
しかし、企業型DCには年収に関係なく受けられるメリットが4つあります。
- 運用益が非課税になる
- 受取時の税制優遇(退職所得控除など)
- 複利効果(利益が利益を生む力)
- 会社が掛金を拠出してくれる
ご自身で老後資金を準備するのが大変だと感じる方こそ、会社の制度を活用すべきです。
まとめ
本記事では、企業型確定拠出年金(企業型DC)で「だまされる」と言われる5つの理由と、そうならないための賢い運用方法について解説しました。
「60歳まで引き出せない」制限や、「自動移換」「高コスト商品」といった罠は、制度を正しく理解し、適切に行動すれば回避できます。知識不足のまま放置することが最大のリスクです。
ご自身の運用商品の見直しや、iDeCo・新NISAとの具体的な組み合わせ方など、個別相談が必要な場合は、幅広い専門家が回答する専門家プロファイルの無料Q&Aを活用して、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。






