近隣トラブルの解決法と予防策は?よくあるトラブル10選や困った時の相談先を紹介

専門家プロファイル編集局

「隣人の騒音が気になって、家にいても気が休まらない」

「注意したいけれど、逆恨みされたら怖くて言い出せない……」

こうした近隣トラブルによる悩みは、誰にでも起こりうる身近な問題です。対処法がわからず、不安に感じる方も少なくないでしょう。

この記事では、よくある近隣トラブルの事例を10選まとめてご紹介。家族を守るためにも知っておきたい関連知識や、生活の中で気をつけるべき情報をまとめました。

近隣住民との問題が起こった時に使える具体的な対処法や証拠の集め方も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

近隣トラブルとは?よくある事例10選

近隣トラブルの主な事例

近隣トラブルにはいくつか典型的なパターンがあります。実際によくある事例を知っておくと、いざという時も冷静に対処できます。

たとえば、生活習慣の違いから発生する問題や法的な権利が関わるケースなどさまざま。

どのような問題が起こりやすいのか、代表的な事例10選を整理しました。

  1. 騒音トラブル|時間帯と音の種類で判断
  2. 悪臭トラブル|ゴミやペットが主な原因
  3. ゴミ出しルール違反|曜日と分別ルールが問題
  4. ペット飼育トラブル|鳴き声と臭いが原因
  5. 駐車・駐輪トラブル|共有スペースの占有が問題
  6. 境界線トラブル|土地の所有権が争点
  7. 共用部のマナー違反|使用時間とルールが争点
  8. いやがらせやストーカー行為|証拠の記録が重要
  9. 日照権の侵害|建築基準法で規制
  10. 庭木の越境|枝の切除と根の処理が必要

よくある事例と照らし合わせることで、トラブルが起こった時も適切な行動が取れるでしょう。

1. 騒音トラブル|時間帯と音の種類で判断

近隣トラブルの調査結果
引用:株式会社ヴァンガードスミス調査結果

騒音に関する苦情などは、特に問題になりやすい近隣トラブルです。

男女500名を対象とした近隣トラブルの調査では「生活音・騒音」の問題を挙げた人が61%でした。

特に深夜帯の騒音被害に関するコメントが多く、過剰な生活音をストレスに感じている人が多くいるようです。

自治体などが定める「時間帯によって許容される音の大きさ」の目安は以下のとおりです。

時間帯基準音量
日中(6時〜22時)50〜55dB程度
夜間(22時〜6時)40〜45dB以下

また、裁判などで違法性を判断する際は単に音のdB値だけでなく、異なる以下の要素が関係しています。

  • 音の種類(テレビの音、足音など)
  • 発生時間帯と頻度(深夜や早朝の傾向など)
  • 被害状況

睡眠を妨げるような衝撃音や継続的に続く音など、騒音トラブルは総合的に見て判断されます。

参照:環境省|騒音に係る環境基準について

2. 悪臭トラブル|ゴミやペットが主な原因

悪臭トラブルは、生活するうえで精神的なストレスも大きくなりがちです。

主な原因として、以下のような例が挙げられます。

原因具体的な内容
生ゴミの腐敗特に夏場は嫌気性微生物が有害物質を発生
ペットの尿含まれるアンモニア
喫煙(タバコ)ベランダでの喫煙による煙や臭い
排水溝の詰まりやカビ湿度の高い環境で雑菌が活発化

ペットの飼育による悪臭では、尿が乾燥することで壁や床に汚れが固まるといったトラブルも起こります。

飼い主の管理不足によって、悪臭源になってしまうケースもあるでしょう。

環境省の臭気対策行政ガイドブックにおいても、悪臭に関する規律が記載されています。

ストレスになりやすい臭いの問題は、近隣同士で起こりやすい問題の一つです。

参照:環境省|臭気対策行政ガイドブック(平成14年4月)

3. ゴミ出しルール違反|曜日と分別ルールが問題

ゴミ出しのルール違反は、近隣トラブルの中でも頻発しやすい問題です。主な問題パターンは以下のとおりです。

  • 指定曜日や時間帯を守らない
  • 分別ルールの不徹底
  • 動物に荒らされる
  • 共有スペースへの粗大ゴミの不法投棄

多くの自治体ではゴミを早朝に出すのが一般的ですが、時間帯を守らないことでカラスや野良猫が袋を破ってしまいます

ゴミの散乱によって、悪臭や害虫の発生にもつながります。

特に夏場の生ゴミは数時間で腐敗が進むため、近隣住民とのトラブルになるかもしれません。

近隣トラブルを防ぐためにも自治体のルールを把握して、収集日時をお互いに守ることが大切です。

4. ペット飼育トラブル|鳴き声と臭いが原因

ペット飼育に関する近隣トラブル事例として、鳴き声や臭いなどが挙げられます

近隣住民から苦情が出やすいため、以下のようにトラブルに関する基準が設けられています。

問題の種類具体例基準値・判例
犬の鳴き声昼夜問わず継続的な吠え声正面5mで88〜100dB、睡眠障害で損害賠償認定
猫の悪臭複数飼育での糞尿未処理臭気指数15〜17(規制基準10超え)
共用部の汚損廊下・エレベーターでの排泄物放置近隣住民の深刻なストレス

管理会社に相談しても改善されない場合、動物愛護管理法第25条が解決の糸口になります。

この法律では、周辺環境が損なわれている場合、都道府県(保健所など)が飼い主に対して指導・勧告できると定めているからです。

当事者間での解決が難しいときは、これらの基準や法律を根拠に、公的機関へ相談してみましょう。

5. 駐車・駐輪トラブル|共有スペースの占有が問題

駐車・駐輪トラブルは、マンションや一戸建ての住民同士でよくある問題です。

具体的には、以下のような問題が起こりやすいようです。

  • 指定場所以外へ駐車する
  • 来客用スペースを長時間占有する
  • 出入口付近や共用通路に駐輪する
  • 近隣の空き地や敷地外への無断駐車する

車や自転車に関するトラブルは、多くの人が利用する共有スペースゆえに起こります

自分専用の場所ではないことを意識し、出入り口の近くには止めないなど全員がルールを守ることが、無用な争いを回避するコツです。

6. 境界線トラブル|土地の所有権が争点

境界線トラブルは、土地の所有権という法的問題を含むため、近隣トラブルの中でも特に複雑化しやすい事案です。

実際によくある例として、以下のようなトラブルがあります。

問題詳細・原因・結果
境界線の位置の対立測量記録の曖昧さや境界杭の劣化が原因となる
越境物の問題建物の一部、塀、樹木の枝や屋根、雨どいなどが該当する
境界杭の無断撤去・移動境界線が不明確になり深刻な対立に発展する

特に古い住宅地では、土地の境界を示す記録(測量図)が曖昧になり、トラブルになりやすいようです。この場合、測量士や弁護士などの専門家の力を借りながら解決します。

参照:政府広報オンライン|土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る「筆界特定制度」

7. 共用部のマナー違反|使用時間とルールが争点

共用部のマナー違反は、集合住宅だけでなく一戸建てでも自治会管理のスペースで起こり得る問題です。

管理員や清掃スタッフが掃除をしにくいといった苦情もよく聞かれます。

主な違反パターンは以下のとおり。

  • 廊下や階段への私物の放置
  • ゴミ置き場や駐輪場の不適切な利用
  • 共用設備の私的利用や汚損

たとえば、廊下や階段にベビーカーを置いたり、自転車を共有部分に置いたりするなどもトラブルの原因です。

共用部の私物放置の危険性
引用:宇都宮市ホームページ

廊下や階段への私物放置は単なるマナー違反ではありません。消防法や区分所有法でも明確に禁止された違法行為です。

実際に共用部を私的に独占した住民に対して、裁判所が撤去を命じた判例も存在します。つまり、あなたには撤去を求める正当な権利があるのです。

管理会社へ相談する際は、単に「邪魔だ」と伝えるだけでなく「消防法上の安全確保に問題がある」と指摘してみてください。

法的根拠を示すことで、管理会社も対応の優先度を上げざるを得なくなり、解決へ近づくはずです。

8. いやがらせやストーカー行為|証拠の記録が重要

いやがらせやストーカー行為は、単なる迷惑行為を超えた深刻な近隣トラブルであり、法的な問題に発展するケースが多く見られます

問題になりやすい手口や、それぞれの法的問題は以下のとおりです。

具体的な手口法的対応
待ち伏せや監視行為ストーカー規制法または迷惑防止条例違反
壁や玄関をたたく迷惑防止条例違反、態様により脅迫罪など
郵便受けを荒らす住居侵入罪や建造物侵入罪、迷惑防止条例違反
玄関先への投石や落書き器物損壊罪や暴行罪など
SNSでの誹謗中傷名誉毀損罪など

令和6年中に警察で取り扱った相談の件数は265万件に達し、前年より増加傾向にあります。

参照:警視庁|令和6年における相談取扱状況について

このように多くの人が悩んでいますが、焦って一人で対処しようとするのは禁物です。

プライバシーを侵害されたり、個人情報から勤務先を特定されたりするリスクがあり、最悪の場合は犯罪に巻き込まれ、身の安全が脅かされるおそれもあります。

住居内でのトラブルが起こった時は、以下の項目を記録しておきましょう。

  • 写真や動画の記録(日時と場所)
  • SNS投稿のスクリーンショット保存
  • 通話履歴や着信記録の保管
  • 被害を受けた日時、場所、状況の詳細なメモ

安心して生活を送るためにも、このようないやがらせが起こった場合は、警察に届けるための証拠も必要です。

いやがらせする人への対処法については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

あわせて読みたい
嫌がらせする人の末路とは?加害者の自滅を待つ前の正しい対処法
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9. 日照権の侵害|建築基準法で規制

日照権トラブルの図解
引用:SUUMO「日照権とは」

日照権の侵害は、隣接地に建てられる高層建物によって日光が遮られるトラブルです。

日当たりに関する住居問題も近隣とトラブルになりやすく、太陽が当たらない状態は生活スタイルにも影響が出ます。

建築基準法による主な規制は以下のとおりです。

  • 日影規制(ひかげきせい)
    • 目的:建物によってできる影の時間を制限する
    • 対象:主に住居系地域
    • 基準:高さ10メートル以上の建物が対象
  • 斜線制限(しゃせんせいげん)
    • 目的:敷地の境界線や道路からの建物の高さを制限し、採光や通風を確保する

日当たりについての近隣トラブルは「日照を侵害する時間」が関係しています。たとえば、1日のうち2時間程度であれば、侵害が認められないケースもあります。

日当たりの悪さや建物についての日照問題が出た時は、適切な対処法を見つけることが大切です。

日照権をめぐるトラブルは、専門家への相談も検討しましょう。

参照:みずほ不動産調査株式会社

10. 庭木の越境|枝の切除と根の処理が必要

庭木の枝や根が隣地に越境するトラブルは、日照阻害や建物への損傷など放置することで深刻化する問題です。

庭木の処理問題は、2023年4月の民法改正により、越境した枝への対応が大きく変わりました

次の3つのいずれかに当てはまる場合、越境された土地の所有者自身が枝を切り取れるようになりました。

  • 木の所有者に枝を切るよう催告したが、一定の期間に切除がない時
  • 木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない時
  • 台風などの災害時で、急迫の事情がある時

たとえば、隣地の所有者が長期不在で連絡が取れない場合や、お願いしても一向に対応してもらえないケースに適用されます。

戸建ての近隣トラブルとして起こりやすい問題のため、所有者の管理が大切です。

参照:神戸市|越境した木の枝の切取りルール【2023年4月改正】

【専門家の回答】解体工事の振動による近隣トラブルの事例

専門家プロファイルでは、不動産業の専門家である向井啓和さんが、以下のような質問に回答しています。

質問者
質問者

自宅の解体工事の振動で、隣人から「古い家なので後で瓦が落ちたら弁償して」と言われました。とっさに承諾しましたが、工事が原因とは限らない損害まで責任を負わされるのではと不安です。今後の近所付き合いも考え、どう対応すべきでしょうか。

専門家
専門家

鉄骨造やRC等の解体は非常に大きな振動が発生します。

地震でも起きたかのようなインパクトに非常に驚かれたのかと思います。

その様な興奮した状態で「うちは100年近い家なので、あまりの振動で屋根瓦が落ちたりするかもしれない。今は大丈夫だが後でそうなった場合、弁償して欲しい。」と言われたと思います。

また、それに対して返事をしたからと言ってその後の責任が全て工事のせいとは常識的に考えても言えないと思います。

そもそも100年経っている家で不具合も色々ある訳ですから周りも取り合わないでしょう。

また、工事にあたって恐らく損害保険を掛けているのではと思います。もし、被害が発生した場合には工事会社が負担するのではと思います。

一応、工事するにあたっての保険の有無を確認ください。

引用:専門家プロファイル|自宅解体での近隣トラブル

庭木の越境問題だけでなく、今回のような解体工事の騒音や振動など、近隣トラブルは多岐にわたります。当事者同士での解決が難しいと感じた際は、専門家の客観的な意見を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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近隣トラブルを防ぐための予防策3つ

近隣トラブルを予防する方法

近隣トラブルを起こさないためにも、あらかじめ予防しておくことが大事です。日頃のちょっとした気遣いでも、トラブルを防ぐことにつながります。

平穏に暮らすために、意識すると良いポイントは以下のとおりです。

  1. 賃貸であれば入居前に近隣住民の様子を確認する
  2. 日常的な挨拶でコミュニケーションを取る
  3. 自分自身も騒音やマナーに配慮する

事前にできる対策を知っておけば、余計な心配せずに毎日を過ごせるでしょう。

1. 賃貸であれば入居前に近隣住民の様子を確認する

入居前に見てほしいポイントの一つが近隣住民の様子です。

物件を選ぶ前に周囲の環境を確認しておくと、実際に住むことになってからの近隣トラブルを大幅に減らせます。不動産情報サイトを見るだけでなく、実際に足を運ぶことが大切です。

内見時の確認ポイントは以下のとおり。

確認ポイント具体的な内容
不動産会社への質問近隣住民の年齢層や過去のトラブル有無を質問する
住居の外観の観察玄関やベランダの私物から住人の生活スタイルを観察する
共用スペースの確認清掃状態、掲示板の注意喚起内容を確認する
複数回訪問平日・休日・夜間と時間帯を変えて訪問する

特に知らない地域へ引っ越す場合は、治安なども確認しておくと安心です。

たとえば、平日や休日など時間帯を変えて訪問することで、住んでいる人たちの雰囲気もわかります。

引っ越してから生活音が聞こえやすいことに気付くケースもあるため、内見時には、生活音の聞こえやすさなども確認しておくと良いでしょう。

2. 日常的な挨拶でコミュニケーションを取る

日頃から近隣住民と挨拶を交わすことは、トラブル予防に役立つ方法です。

「おはようございます」といった簡単な挨拶でも、相手の顔や人柄を知ることで安心感が生まれます。

挨拶以外の良好な関係づくりのコツは、以下を参考にしてください。

  • ゴミ出しや共用部で会った時に軽く会釈する
  • 長期不在時は事前にひと言伝えておく
  • 引越しや工事がある際は事前に挨拶する

たとえば、共有スペースですれ違う時に簡単な挨拶をしておくのも一つ。

日常的にコミュニケーションを取り合うことで、トラブルの起こりにくい生活ができます。

一方、些細な誤解や無関心でストレスが生じ、大きなトラブルに発展するケースは少なくありません。

顔見知りの関係であれば、多少の生活音やマナーも配慮しやすいでしょう。

3. 自分自身も騒音やマナーに配慮する

近隣トラブルは相手だけでなく、自分自身が原因となる可能性もあります。日頃から配慮を怠らないことで、良好な関係を保つことが可能です。

日常生活での配慮するポイントは、以下のとおり。

  • 深夜帯の騒音を避ける
  • 自治体が定めたゴミ出しの日時と分別ルールを厳守する
  • ペットの鳴き声や臭い対策を徹底する
  • 共有スペースに私物を放置しない
  • 植物の枝や根が隣家に越境しないよう定期的に手入れする

足音や扉の開閉音が気になる場合は、音の種類に合わせた対策が必要です。

足音には「防音マット」を敷き、扉が当たる部分には「クッションテープ」を貼るなど、発生源ごとに適切なグッズを活用することで、生活音を効果的に軽減できますよ。

【専門家の回答】それでも近隣トラブルに発展してしまったら?

専門家プロファイルでは、不動産コンサルタントの大槻圭将さんが、近隣の騒音トラブルに関する以下のような質問に回答しています。

質問者
質問者

楽器不可のマンションで、階上の住人が毎晩遅い時間にピアノを弾いていて困っています。直接苦情を言うと今後のご近所付き合いに影響が出そうで不安です。角を立てずに穏便に解決できる良い方法はないでしょうか。

専門家
専門家

ズバリ、まず管理会社に相談してください。 音って人それぞれの主観があるので確かに難しいところではありますが、楽器不可のマンションならすぐに演奏を止めてもらうようお知らせを出します。

そのほかの騒音についても私達ノースエステート:all@nos-estate.co.jpでは、まず一棟にアンケートを実施します。その項目のなかで「最近うるさく無いですか」的な質問も入れたりして。それで周りの入居者さんがどう捕らえているかを把握しその後、これまた一棟に「最近ちょとうるさいと苦情が来ています」的なお知らせを投函しています。

一部、どうしようもない方もいらっしゃるかも知れませんが、根気よくやると案外改善の方向に向かいますよ。(と管理会社に言ってください^^;)

引用:専門家プロファイル|マンションの騒音、穏便に解決するには?

このように、自分では解決が難しい近隣トラブルも、専門家に相談することで解決の糸口が見つかることがあります。騒音やマナーの問題で悩んでいる方は、一度専門家プロファイルで相談してみてはいかがでしょうか。

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近隣トラブルが起こったときの対処法5つ

近隣トラブルの対処法

トラブルが起こらないよう配慮していても、予期せぬトラブルが起こるケースもあります。もし近隣同士で問題が起こったとしても、適切な手順を知っていれば冷静な対処が可能です。

問題を大きくせずに済むケースもあるので、具体的な対処を5つ解説します。

  1. トラブルの日時・内容・頻度をメモに記録する
  2. 騒音や被害状況を写真や動画で撮影する
  3. マンションは管理会社・一戸建ては自治会に相談
  4. 改善されない場合は警察や自治体窓口に相談
  5. 損害賠償や訴訟が必要な場合は弁護士に相談

それぞれの方法を理解しておけば、いざという時も落ち着いて行動できるでしょう。

1. トラブルの日時・内容・頻度をメモに記録する

トラブル解決の第一歩は、被害の状況を詳細な記録として残すことです。

いつ、誰が、どんな迷惑行為をしたのか客観的な証拠があれば、管理会社への相談や警察への通報がスムーズに進みます。

証拠能力を高めるために、以下の5つの項目を漏れなく記載してください。

項目記録のポイント
日付・時刻いつ発生し、どのくらい続いたか
場所どこで起こったか(部屋、廊下など)
状況具体的な音の種類、臭い、相手の言動
影響睡眠不足、動悸、作業の中断など
証拠撮影・録音データのファイル名

詳細かつ継続的な記録は信憑性が高く、管理会社が注意喚起をする際の強力な根拠となります。万が一裁判に発展した場合でも、被害を裏付ける重要な証拠として扱われます。

また、たとえ個々の騒音が小さくても、記録によって「頻繁に繰り返されている」「改善の意思がない」といった悪質性を証明できれば、対応してもらえる可能性が高まるでしょう。

感情的に訴えるのではなく、事実に基づいたメモを提示して、管理会社や警察を味方につけることが大切です。

参照:兵庫県弁護士会|「騒音うるさい」と階下住人が慰謝料要求-「受忍限度」を総合的に判断

2. 騒音や被害状況を写真や動画で撮影する

トラブルの記録を文字で残すだけでなく、写真や動画も撮っておきましょう。写真や動画の記録は、文章だけでは伝わりにくい状況を客観的に示せます。

ストーカーや騒音、ペットなどの近隣トラブルがあった場合でも、動画の方が明確です。

具体的な撮影時のポイントは以下のとおり。

  • 日時がわかるよう、スマートフォンの日時表示を画面に入れる
  • 被害箇所だけでなく周囲の状況も含めて撮影する
  • 動画と静止画の両方で記録し、繰り返し発生する様子を残す
  • 騒音の場合は、騒音計とビデオカメラを併用して音源と数値を同時記録する

撮影範囲は自分の敷地内に限定し、トラブルと関係のない住民への配慮も必要です。撮影した証拠はクラウドサービスに保存し、複数の場所にバックアップしておくと良いでしょう。

3. マンションは管理会社・一戸建ては自治会に相談

基本的な近隣トラブルは、住まいによって対応する窓口が違います。トラブルについて相談する場所を事前に確認しておくと、いざという時も安心です。

住居形態相談先対応内容
マンション管理会社管理規約にもとづく注意喚起、理事会を通じた対応
一戸建て自治会・町内会地域ルールに基づくアドバイス、仲介

マンションにお住まいの方は、トラブルが起こった時は管理会社に連絡しましょう。管理会社は建物全体のルール管理や住民間の調整を担っているため、中立的な立場で対応してくれます。

一方、一戸建てにお住まいの方は自治会や町内会への相談が有効です。

実際に相談する時は「トラブルに関するメモ」や「実際に撮影した動画」があるとスムーズに対応してくれます。

4. 改善されない場合は警察や自治体窓口に相談

管理会社や自治会に相談しても改善が見られない場合は、公的機関へ相談するのもおすすめです。

主な相談先は以下のとおり。

相談先対応内容連絡先
警察器物破損や住居侵入など刑事事件への対応緊急時110番、相談は#9110
自治体の生活課・市民相談窓口騒音やゴミ出し、駐車問題の指導電話・メール相談可

ただし、警察は証拠がないと対応が難しいケースもあります。民事不介入の原則によって、「警察は私的な争い(民事)には原則として介入しない」というルールがあるからです。

一方、自治体の「生活課」や「市民相談窓口」では、騒音を公害として扱い、相手への指導も可能です。

管理会社だけでの対応が難しいケースは、メモや動画などの証拠を持参して相談しましょう。

管理会社への相談履歴も、すでに手を尽くしたことを証明し、公的機関に動いてもらうための重要な材料となります。

参照:総務省|騒音や悪臭などでお困りの方へ

5. 損害賠償や訴訟が必要な場合は弁護士に相談

管理会社や警察に相談しても解決しない場合や、損害が大きく法的措置が必要になったら、弁護士への相談を検討しましょう。

  • 相手が交渉に応じない
  • 感情的な対立が激しい
  • 受忍限度を超えた被害である

場合によっては弁護士の介入が有効です。また、受忍限度を超えた騒音や悪臭で損害賠償請求が発生するケースもあります。

たとえば「一般財団法人不動産適正取引推進機構」のトラブル事例として、近隣住民がハトに餌を与える行為がありました。近隣の共同生活を乱したため、賃貸借契約の解除が認められた判例です。

弁護士が状況を正確に把握しやすくするために、トラブルに関するすべての証拠を整理しておきましょう。

近隣トラブルの弁護士費用相場

弁護士に相談する際は、まず相談料として1時間あたり5,000〜10,000円程度が必要です。ただし、初回相談を無料で受け付けている法律事務所も多いため、複数の事務所に問い合わせてみると良いでしょう。

実際に依頼する場合の費用相場は以下のとおりです。

手続きの種類費用相場
内容証明郵便の送付約5万円
交渉約10万円
調停約20万円
訴訟30〜50万円
成功報酬獲得金額の10〜20%

こうして見ると費用が高額で、依頼を躊躇してしまうかもしれません。しかし、全額を自己負担せずに済む場合があります。

実は、単独の弁護士保険だけでなく、加入中の火災保険や自動車保険に「日常生活のトラブル」を対象とした弁護士費用特約が付帯されているケースがあるからです。

費用負担を大幅に減らせる可能性があるため、依頼前に保険証券を確認してみるとよいでしょう。

近隣トラブルに関するよくある質問

よくある質問 Q&A

近隣トラブルに関するよくある質問に回答します。疑問をお持ちの方は参考にしてください。

Q
近隣トラブルの慰謝料の相場はいくらですか?
A

近隣トラブルで請求できる慰謝料は、一般的に数万円から数十万円程度が相場です。ただし、ケースによって金額は大きく変動するため、あくまで目安にしてください。慰謝料額を左右する主な要因は以下の要素で変化します。

  • トラブルの頻度と期間
  • 被害の深刻度
  • 精神的苦痛の大きさ
  • 証拠の有無
  • 相手の対応

請求が認められるのは「受忍限度(我慢すべき範囲)」を超えた妨害行為であるケースでしょう。

Q
近隣トラブルによる精神的苦痛は慰謝料請求できますか?
A

近隣トラブルによる精神的苦痛は「不法行為(民法第709条)」により、一定の条件を満たせば慰謝料を請求できます。ただし、単に不快な思いをしただけでは認められず「騒音などが許容範囲を超えている」と判断する場合に限ります。

請求を認めてもらうには、医師の診断書や騒音計のデータ、証拠も必要です。メンタルに影響を与えるようなトラブルに悩む時は、専門家に助言をもらうのも一つの方法です。

Q
近隣トラブルは不動産の資産価値に影響しますか?
A

近隣トラブルは、不動産の資産価値に影響を及ぼすケースがあります。たとえば、騒音や境界線問題などのトラブルが未解決のままだと、購入希望者にマイナスの印象を与えてしまいかねません。

その結果、相場より安い価格での売却になるケースも見られます。

不動産売却時にはトラブルの告知義務があるため、資産価値の低下を防ぐためにも、問題が小さいうちに管理会社や自治体へ相談して解決を目指しましょう。

まとめ

近隣トラブルの解決には、早めの対処と適切な相談先の選択が欠かせません

騒音や異臭、共同生活のルール違反といった問題が発生した場合は、証拠を残して管理会社か自治会へ連絡してください。メモや記録を残すことで、より適切なサポートを受けられます。

こうした共同生活のルール違反や境界線による近隣トラブルが解決しない場合は、公的機関への相談も手段の一つ。法的な助言や、深刻な被害に対する対処が必要な時は、専門家を頼る方法もあります。

幅広い分野の専門家が回答するコラムや無料Q&Aが充実した専門家プロファイルを活用すれば、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを得られるでしょう。

気になることがあれば、ぜひ質問してみてください。

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