【2025年最新】遺産相続の時効は何年?相続税の放棄や登記の期限、手続きを解説
親が亡くなり相続が発生したものの「相続放棄は3ヶ月以内って聞いたけど間に合う?」「相続税の時効は5年?7年?」など、複数の期限が絡み合って混乱している方もいるでしょう。
2024年4月には相続登記の義務化がスタートし、以前から放置していた不動産も3年以内の届出が必要になりました。
期限を過ぎれば過料や加算税が発生するケースもあり「すでに手遅れかもしれない」と不安を感じている方もいるかもしれません。
この記事では、相続税の時効が5年か7年かの判定基準、相続放棄の3ヶ月ルールと例外、2024年に義務化された相続登記の届出期限、遺留分侵害額請求や特別受益の時効まで、相続に関する8つの時効・期限などの情報を一覧で整理しています。
自分のケースに該当する期限と残り時間を確認して、必要な手続きを整理していきましょう。
相続の時効とは?種類と期限の基本を解説

相続では、相続税の申告や相続放棄、準確定申告、遺留分侵害額請求、相続登記など多くの手続きに「時効」や「期限(申告期限・除斥期間等)」が設けられています。
正しく理解していないと、権利を失ったり延滞税や加算税などのペナルティを受けたりする可能性があります。
ここでは、相続に関する時効・期限の基本を確認しましょう。
- 時効と除斥期間の違い
- 相続に関する8つの時効・期限一覧
- 時効の起算点と権利発生日の関係
- 時効の完成猶予・更新によるリセット
時効と除斥期間の違いから順番に説明します。
時効と除斥期間の違い
相続における期限には、期間経過によって権利消滅が成立する「時効」と、一定期間で権利が消える「除斥期間」の2種類があります。
時効は借金や贈与契約の履行請求権などに適用され、除斥期間は遺留分侵害額請求権や相続税の納税義務(賦課権)などに適用されます。
どちらも「時間が経つと権利が消える(時効が成立する)」点は同じですが、中断や更新が認められるかなど、「リセットできるかどうか」というルールが大きく違います。
2つの違いを表にまとめたので、参考にしてください。
| 項目 | 時効 | 除斥期間 |
|---|---|---|
| 更新・中断 | 認められる | 認められない |
| 起算点 | 権利を知ったときから | 事実が発生したときから |
| 期間経過後 | 援用が必要な場合も | 自動的に消滅 |
| 相続での例 | 遺留分侵害額請求、借金など | 相続税の賦課決定など |
相続税の申告義務における5年・7年の期間は、実際には除斥期間として扱われます。
相続に関する8つの時効・期限一覧
相続に関わる主要な時効・期限は、次の表で確認できます。
| 手続き | 期限 | 起算点 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 3ヶ月 | 相続開始を知った日 |
| 相続税の申告・納付 | 10ヶ月 | 死亡を知った日の翌日 |
| 相続税の時効(善意) | 5年 | 申告期限の翌日 |
| 相続税の時効(悪意) | 7年 | 申告期限の翌日 |
| 遺留分侵害額請求 | 1年・10年 | 侵害を知った日・相続開始日 |
| 相続登記 | 3年 | 不動産取得を知った日 |
| 相続回復請求権 | 5年・20年 | 侵害を知った日・相続開始日 |
| 預金債権 | 5年 | 権利行使が可能な時 |
それぞれの期限を過ぎると、不動産の売却や遺産分割ができなくなったり、税務署から最大40%の重加算税を課されたりといったペナルティが発生します。
相続放棄(3ヶ月)や相続税申告(10ヶ月)は短期間での対応が必要なため、早めに確認するようにしましょう。
時効の起算点と権利発生日の関係
時効の起算点とは、時効期間のカウントが始まる日のことです。
相続に関する時効は、以下のようにそれぞれ異なる起算点から進行します。
| 手続き | 起算点 | 期間 |
|---|---|---|
| 相続税の時効 | 法定申告期限の翌日(死亡を知った日の翌日から10ヶ月後の翌日) | 5年または7年 |
| 遺留分侵害額請求 | 相続開始と侵害の両方を知った時 | 1年 |
| 相続放棄 | 自分が相続人になったことを知った時 | 3ヶ月 |
権利が発生した日と起算点が一致しない場合もあるため、注意が必要です。
相続税の時効は被相続人の死亡日ではなく、申告期限の翌日から進行します。
起算点が不明確な場合は、実績のある事務所など、税理士をはじめとした専門家の選び方を意識して相談し、正確な期限を確認するのが良いでしょう。
時効の完成猶予・更新によるリセット
時効期間が経過しそうになっても、特定の事由があれば、期間の進行を遅らせたりゼロから再スタートさせたりすることができます。
| 制度の名称 | 概念 |
|---|---|
| 完成猶予 | 時効の完成を一定期間だけ先延ばしにする |
| 更新 | 積み上がった期間をゼロに戻し、最初から数え直す |
時効の完成猶予とは裁判上で請求・催告することで、時効の完成を一時的にストップさせる制度です。
例えば、相手に内容証明郵便を送って支払いを求めるよう催告すると、その通知が届いてから6ヶ月間は時効が完成しません。
そのため時効ギリギリのタイミングであっても、裁判の準備をしたり話し合いをしたりする時間を確保できます。
時効の更新とは、権利の承認や判決の確定によって、これまでの経過期間をリセットしゼロから数え直す制度です。
例えば、相手が借金の一部を支払うなどして債務を認めるよう承認すると、その翌日から改めて時効期間(5年や10年など)がスタートします。なお、旧民法では「時効の中断」と呼ばれていました。
相続税の時効が成立する条件

相続税の時効は「5年経過すれば成立して大丈夫」というわけではありません。納税者の認識状況や税務署の動きによって時効が成立するまでの期間や進行状況が変わります。
ここでは、確実に時効が成立し、納税義務が消滅するための条件を確認していきます。
- 善意は5年・悪意は7年で判定される
- 起算日は申告期限の翌日から始まる
- 税務調査の通知で時効は停止しない
- 還付請求権(更正の請求)は法定申告期限から5年で消滅する
自分のケースがどちらに該当するか確認していきましょう。
時効は原則5年・不正行為があれば7年
相続税の時効は、不正行為の有無によって期間が変わります。
| 区分 | 内容 | 時効期間 |
|---|---|---|
| 原則 | 申告漏れや計算ミスなど、不正行為がない場合 | 5年 |
| 不正行為あり | 財産隠しや書類偽装など「偽りその他不正の行為」があった場合 | 7年 |
時効期間は、申告期限の翌日から原則5年です。ただし、意図的に財産を隠すなど「偽りその他不正の行為」があった場合は7年に延長されます。(参照:国税通則法第70条 | e-Gov 法令検索)
「偽りその他不正の行為」に該当しうる例として、以下のようなケースがあります。
- タンス預金や名義預金などを意図的に申告から除外した場合
- 架空の債務を計上して相続財産を過少に見せかけた場合
- 宅地や建物など相続財産の評価額を故意に低く申告した場合
単なる「うっかり忘れ」や計算ミスで、故意の不正行為がなければ原則どおり5年で時効が成立します。
一方で、生前贈与の事実を隠したり、納税を免れるために意図的に財産を隠したりした場合は「不正行為」とみなされ、贈与税や相続税の時効期間として7年が適用される可能性があります。
判断に迷う場合は、申告書の作成を含め早めに税理士へ依頼することを検討しましょう。
起算日は申告期限の翌日から始まる
相続税の時効における起算日は、法定申告期限の翌日です。
法定申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。例えば1月6日に亡くなった場合、翌日の1月7日を起算日として10ヶ月後の11月6日が申告期限です。時効のカウントは翌日の11月7日からスタートします。(参照:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税)
相続発生日から換算すると、不正行為がない場合は5年10ヶ月後、不正行為があった場合は7年10ヶ月後に時効が成立します。
税務調査の通知で時効は停止しない
よくある誤解ですが、税務署から「税務調査します」という通知が届いても、相続税の時効(除斥期間)の進行は止まりません。
民法の時効(借金など)とは異なり、相続税の期間制限には「中断」や「停止」という制度がないため、調査されている間であっても時間は経過し続けます。(参照:国税通則法第70条1項 | e-Gov 法令検索)
そのため、税務署は原則5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)という期間内に、調査から処分(課税の決定)までをすべて完了させる必要があるのです。
万が一、調査が長引いて期限の日を過ぎてしまった場合、国はそれ以上課税する権利を失います。
還付請求権(更正の請求)は法定申告期限から5年で消滅する
相続税を過大に申告・納付していた場合に、税務署長に対して税額の減額や還付を求める手続きを更正の請求といいます。
この更正の請求ができる期間(除斥期間)は、法定申告期限の翌日から5年と定められています。(参照:国税通則法第23条1項)
専門家プロファイルでは、法律の専門家である弁護士の酒井 尚土さんが、相続手続きの期限や遺留分の時効に関する質問に回答しています。
【質問(要約)】

1年3ヶ月前に祖父が他界し、代襲相続権があるはずですが、叔母から連絡がなく相続税の申告期限も過ぎています。叔母が何か企んでいるのでしょうか。また、遺留分を請求できる期限にはまだ間に合いますか?
【回答】

(前略) 「相続手続きの期限である10ヶ月」というのは相続税の申告期限のことですね。 叔母の意図について特定はできませんが、財産全部を叔母が相続するという(公正証書)遺言があるので、遺言書の内容に従って既に相続税申告・登記移転等の処理を済ませている(中略)あるいは法定相続分だけの申告を済ませているとか、単に面倒であるいはほかに厄介なことがあって放置しているとか、色々な推測はできると思います。
(中略)
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。(中略) 1年3月前に祖父が他界したようですが、問題はいつから上の条文に規定されている時効の「一年間」を数えるかという点(起算点)です。(中略)あなたが、遺言等によって叔母に対して相談者たちの遺留分を侵害するような遺贈がなされた事実を確認したことはないというのでしたら、起算点がないので、未だに1年の期間は開始も到来もしていないとも考えられますね。(中略)遺留分減殺請求権が行使できる可能性はあると考えられます。 (後略)
相続税の時効や遺留分の請求期限は「期限のカウントがいつ始まるか(起算日)」の判断が非常に重要であり、個別の事情によって大きく異なります。
ご自身の状況で時効が成立しているかどうか不安な場合は、手遅れになる前に専門家へ相談することをお勧めします。
相続放棄の期限はいつまで?3ヶ月の計算方法と延長・例外ルール

相続放棄には「3ヶ月」という明確な期限があり、この期間を過ぎると原則として放棄できません。期限内であれば借金・住宅ローン・連帯保証債務を含むすべての相続財産を手放せます。しかし期限を過ぎると被相続人の負債を引き継がなければなりません。
ここでは、相続放棄の期限と対処法を解説します。
- 熟慮期間は相続を知った日から起算する
- 家庭裁判所への申立てで期間を伸長できる
- 3ヶ月経過後も例外的に放棄が認められるケースがある
期限内に判断できるよう、順番に見ていきましょう。
熟慮期間は相続を知った日から起算する
相続放棄の3ヶ月は、民法上「自己のために相続の開始があったことを知った時」から数え始めます。(参照:裁判所|相続の放棄の申述)
単に被相続人が亡くなった事実を知っただけでなく、自分が相続人になったことの両方を認識した日が起算点です。
先順位の相続人が全員放棄して自分に順番が回ってきた場合は、その通知を受けた日から改めて3ヶ月が始まります。
起算日を特定する証拠として、除籍謄本や死亡届受理証明書、遺言執行者からの通知書などが有効です。
家庭裁判所への申立てで期間を伸長できる
3ヶ月以内に相続財産の調査が終わらない場合は、家庭裁判所への申立てで熟慮期間を延長できます。(参照:裁判所|相続の承認又は放棄の期間の伸長)
申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。準備すべき書類は以下の通りです。
- 相続の承認または放棄の期間伸長申立書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申立人(相続人)の戸籍謄本
- 収入印紙と郵便切手(連絡用)
伸長が認められるのは、相続財産が遠方にある、関係者との連絡に時間がかかるなど正当な理由がある場合です。
通常は3ヶ月程度の延長が認められ、それでも足りない場合は再度の申立ても可能です。
3ヶ月経過後も例外的に放棄が認められるケースがある
原則として「相続の開始を知った時」から3ヶ月以内(熟慮期間)に相続放棄する必要があります。
ただし、期間を過ぎたり財産に手をつけたりしてしまった場合でも、事情によっては例外的に放棄が認められる可能性があります。
- 借金の督促状が届いて初めて、債務の存在を知った場合
- 生前の交流が断絶しており、財産状況を知る由もなかった場合
最高裁の判例(昭和59年)でも、被相続人に相続財産がまったくないと信じ、そう信じることに正当な理由がある場合には、3ヶ月経過後も放棄が認められる余地があるとしています。
財産を使ってしまった場合は原則として放棄できない
預貯金の解約や遺品の売却など、相続財産を処分すると、法律上は法定単純承認(相続を認めたこと)が成立したとみなされ、原則として放棄ができなくなります。(参照:民法第921条)
ただし、経済的価値がほとんどない遺品の形見分けについては、判例上「処分」に該当しないとされています。例えば、着古した衣類や写真など、交換価値を失っている品物であれば、受け取っても法定単純承認にはあたりません。
一方で、高価な衣類やブランド品、貴金属などを多数持ち帰った場合は「処分」や「隠匿」とみなされ、相続放棄ができなくなるケースもあります。
何が処分に該当するかはケースバイケースで判断されるため、迷った場合は遺品に手をつける前に弁護士や司法書士へ相談し、手続きの中で不明点がないか確認してください。
専門家プロファイルでは、相続手続きに詳しい行政書士の田島 充さんが、借金がある場合の相続放棄について回答しています。
【質問(要約)】

義母が連帯保証人となっている1200万円の借金があります。義母の死後、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをすれば、私たち夫婦や義兄弟に返済義務は生じないでしょうか。また、手続きに際して今後起こりうる問題点などがあればアドバイスをお願いします。
【回答】

(前略)借金自体は20年前のものなので本来なら消滅時効が成立するのですが、お義母様が毎月2千円支払っている行為は、民法147条の時効の中断事由である承認にあたるかと思いますので、今回の場合は時効が成立していないといえます。
そこで、現在の状態でお義母様がお亡くなりになるとその借金の債務は3人のご兄弟に分割されることになります。その時は質問者様のおっしゃるとおり3ヶ月以内に相続放棄の旨を家庭裁判所に申述すれば問題ないかと思います。
そのさいに共同相続人である3人のご兄弟が一緒に対応を決めておかないと、放棄しない人がいるとその人に放棄した人の分の債務まで背負わせてしまうことになります。また、相続の放棄とは遺産に属する債務のみならず、資産のすべても承継しなかったことになるため、遺産の一部を使用してしまうと放棄が認められなくなることがありますので注意が必要です。
(後略)
引用:専門家プロファイル|主人の父が債務者、母が連帯保証人の借金問題について
相続放棄には3ヶ月という期限だけでなく、遺産に手をつけることで放棄できなくなるリスクも潜んでいます。
期限の管理や財産調査に不安がある場合は、専門家プロファイルで経験豊富な専門家に直接相談してみることをおすすめします。
その他の相続に関する時効・期限

相続には、相続税や相続放棄以外にも、遺留分・遺産分割・相続登記・預金債権など複数の手続きに時効・期限が設けられています。
見落としがちな時効・期限を確認していきます。
- 遺留分侵害額請求は1年で時効・10年で消滅する
- 遺産分割請求権に時効はないが放置リスクが生じる
- 特別受益・寄与分は相続開始から10年で主張できなくなる
- 相続登記は2024年から3年以内の申請が義務化された
- 預金債権は5年で消滅時効にかかる
それぞれの期限を把握して、権利を失わないよう早めに対応するのがおすすめです。
遺留分侵害額請求は1年で時効・10年で消滅する
遺留分侵害額請求権(贈与等の取り戻し)には、2つの異なる期限が設けられています。
| 期限 | 起算点 | 種類 |
|---|---|---|
| 1年 | 相続開始と侵害の事実を知った時 | 時効 |
| 10年 | 被相続人の死亡時 | 除斥期間 |
参照:民法1048条 | e-Gov 法令検索
1年の時効は相手方が時効成立を主張(援用)すれば権利が消滅するのに対し、10年の期間は贈与や侵害の事実を知らなかったとしても自動的に権利が消滅します。
生前贈与や遺言によって他の相続人に全財産が贈与・譲渡されているなど、遺留分を侵害されている可能性がある場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
万が一の際に残された家族の生活を守る遺族年金制度については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてお読みください。

遺産分割請求権に時効はないが放置リスクが生じる
遺産分割請求権そのものに時効は設けられていません。相続開始から何年経過しても、共同相続人はいつでも遺産分割を請求できます。
放置すると、以下のような不利益が生じる可能性があります。
- 相続税申告の期限(10ヶ月)を過ぎると、配偶者の税額軽減などの特例が直ちには使えず、一時的に税負担が増える(※)
- 遺留分侵害額請求権は1年・10年で消滅するため、他の相続人への対抗手段を失う
- 不動産の名義変更ができず、売却や担保設定などの処分が不可能になる
- 相続人が亡くなると権利関係が複雑化し、合意形成が困難になる
(※)相続税申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に遺産分割が完了した場合に限り、分割完了後4ヶ月以内に更正の請求を行うことで特例を適用できます。
遺産分割は後回しにせず、相続開始後なるべく早い段階で協議を始めるのがおすすめです。
専門家プロファイルでは、司法書士の高島一寛さんが、相続開始から長期間経過した後の遺留分請求に関する質問に回答しています。
【質問(要約)】

父の遺言により27年前に兄へ借地権が相続された事実を最近知りました。遺留分侵害額請求には「事実を知ってから1年」「相続開始から10年」という期限があるようですが、相続から27年経過した今からでも請求は可能なのでしょうか。
【回答】

はじめまして、司法書士の高島一寛と申します。
遺留分については、民法で次のように規定されています。 個別のケースについては、専門家にご相談されることをおすすめします。
まず、遺留分減殺の請求権は、以下の場合に時効によって消滅します。
・遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与、 または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき
・相続開始の時から10年を経過したとき
「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」とすれば それから1年間で時効消滅します。
上記の事実を知らなかったとしても「相続開始の時から10年を経過」すれば 時効消滅するわけです。
また、遺留分減殺請求の対象となる「贈与」の範囲は次のとおりです。
・相続開始前の1年間にしたもの
・当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っておこなった贈与
贈与がおこなわれたのが1年よりも前で、遺留分権利者に損害を与えるとの 認識がなかったとすれば、その贈与は含まれないわけです。
引用:専門家プロファイル|遺留分を請求することはできるでしょうか?
このように、遺留分侵害額請求には「相続開始から10年」という絶対的な期限(除斥期間)が存在し、侵害の事実を知らなかったとしても権利が消滅してしまいます。
複雑な相続問題や時効の判断で悩まれた際は、専門家プロファイルで経験豊富な専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
特別受益・寄与分は相続開始から10年で主張できなくなる
2023年4月に施行された民法改正により、特別受益(生前贈与など)や寄与分の主張には期限が設けられました。
相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として過去の贈与に関する主張はできなくなり、期間制限が成立します。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 相続開始から10年以内に遺産分割の合意または家庭裁判所への申立てが必要 |
| 例外 | 10年経過後でも相続人全員の同意があれば主張可能 |
| 経過措置 | 改正前の相続(2023年3月31日以前に開始)は、相続開始から10年経過時または2028年3月31日のいずれか遅い方まで猶予 |
参照:民法第904条の3
特別受益や寄与分に心当たりがある方は、期限内に遺産分割協議を進めておくと安心です。
専門家プロファイルでは、行政書士の田島充さんが、過去の生前贈与を巡る兄弟間のトラブルについて回答しています。
【質問(要約)】

28年前に亡くなった父から、35年前に生前贈与を受けて登記も済ませた土地について、今になって弟から「無効だから分割せよ」と要求されています。執拗な嫌がらせを受け精神的に疲弊していますが、このような古い贈与についても遺産分割に応じる必要があるのでしょうか。
【回答】

(前略) 35年前の土地の無償贈与について、法律的に分割に応じる必要はないと思われます。
不動産の贈与契約において、所有権の移転登記がなされたときは贈与の履行が終わったとみなされます。今回の場合、弟さんが登記を確認して贈与を知ったということは移転登記がなされているということですのでこの土地は有効に質問者様のものになっているといえます。
つまり、贈与の契約が成立しその履行も終わっていますので、この土地はそもそもお父様の遺産には含まれないことになります。よって相続の対象ではなく質問者様本人の土地ですので、弟さんの言うように分割に応じる必要はないのです。
しかし、お父様から贈与を受けてから7年後にお父様がお亡くなりになっていますので、土地は質問者様がすべて受け取り、その他の遺産も弟さんと同じということになりますと弟さんも納得いかないかもしれません。
よって、お父様がお亡くなりになったときにその土地以外にも財産があって質問者様がその資産を受け取られたのであれば、土地の分を差し引いて多少は弟さんに譲る必要があるかもしれません。 よろしければ参考にしてみてください。
引用:専門家プロファイル|遺産相続における生前贈与の時効について
法改正により特別受益等の主張には期限が設けられましたが、今回の事例のように、過去の贈与が蒸し返されてトラブルになるケースは少なくありません。
ご自身のケースが期限の対象になるのか、あるいは特別な事情があるのか、判断に迷う場合は専門家プロファイルで個別の事情を相談してみてはいかがでしょうか。
相続登記は2024年から3年以内の申請が義務化された
2024年4月1日から、相続登記が法律で義務化されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 不動産取得を知った日から3年以内 |
| 届出先 | 法務局 |
| 違反時のペナルティ | 10万円以下の過料 |
| 施行前の相続 | 2027年3月31日までに登記 |
相続で不動産を取得した場合は、期限内に法務局での登記手続きが必要です。
預金債権は5年で消滅時効にかかる
相続した銀行預金には、5年という消滅時効があります。
2020年4月の民法改正により、預金債権を含む一般の債権は「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方が経過すると時効にかかることになりました。(参照:e-Gov法令検索|民法166条)
時効が成立すると相続人であっても預金を引き出せなくなる可能性があるため、相続開始後は早めに金融機関へ連絡し、必要な手続きを進めるのがおすすめです。
時効を待つリスクと延滞税・加算税

相続税の申告や納税を怠り期限を過ぎると、時効を待つ間にも税務署から重いペナルティが課されます。
ここでは、時効を待つリスクとペナルティの内容を解説します。
- 無申告加算税は最大20%が課される
- 悪質な場合は重加算税40%が上乗せされる
- 税務署の調査で申告漏れは高確率で発覚する
- 自主申告で加算税を5%に軽減できる
時効を待つ判断がいかに危険か確認していきましょう。
無申告加算税は最大20%が課される
相続税を期限内に申告しなかった場合、本来の税額に加えて無申告加算税が課されます。
| 申告タイミング | 50万円以下 | 50万円超 |
|---|---|---|
| 自主申告 | 5% | 5% |
| 調査通知後 | 10% | 15% |
| 調査後指摘 | 15% | 20% |
税務調査で指摘されてから申告した場合、50万円以下の部分には15%、50万円を超える部分には20%の無申告加算税が課されます。
税務署に指摘される前に自ら申告すれば、税率を5%に抑えられます。(参照:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき)
悪質な場合は重加算税40%が上乗せされる
意図的に財産を隠したり虚偽を申告したりした場合、無申告加算税に代えて重加算税40%が課されます。
重加算税の対象となる行為は以下の通りです。
- 相続財産と知りながら外国金貨を貸金庫に移し替え、故意に申告から除外した
- 被相続人の口座から多額の現金を出金し、家族名義の預金として隠蔽した
例えば無申告で1,100万円の相続税が発生していた場合、重加算税は440万円にも達します。本来の税額と合わせると総負担は1,540万円となり、正直に申告していれば払わずに済んだ金額を失うことになります。
参照:国税通則法第68条
税務署の調査で申告漏れは高確率で発覚する
相続税の申告漏れは、税務署の調査によって高い確率で発覚します。
税務署は死亡届の提出時点で相続の発生を把握し、被相続人の過去の所得や不動産、金融機関の口座情報などを照合する仕組みを整えています。
金融機関への照会によって被相続人と相続人双方の入出金履歴を詳細に分析できるため、申告内容との矛盾を発見しやすい環境です。
令和6事務年度の実地調査では、調査を受けた案件の約82%で申告漏れが指摘されました。
近年はAIの導入によって調査の精度がさらに向上しており、システム的に発覚する可能性が高くなっています。
自主申告で加算税を5%に軽減できる
申告期限を過ぎてしまった場合でも、税務署から連絡が来る前に自ら申告・納付すれば、無申告加算税を5%に抑えられます。
延滞税も納付までの日数で計算されるため、迅速に対応するほどペナルティとしてかかる金額(総額)を減らせます。申告漏れに気づいたら、一日でも早く税務署や税理士に相談し、自主申告の手続きを進めるのがおすすめです。
相続税の申告や家計全般についてお金の専門家に相談したい場合は、以下の記事でファイナンシャルプランナーへの相談方法を詳しく解説しているので、あわせてお読みください。

専門家プロファイルでは、ファイナンシャルプランナーの専門家が、税務署から申告漏れを指摘された際の対応について回答しています。
【質問(要約)】

祖父から受け取った500万円を申告していなかった母のもとに、祖父の死後、税務署から本税と追徴課税の支払いを求める連絡が来ました。今からでも相続時精算課税制度を利用し、遡って申告することで課税を回避できないでしょうか。
【回答】

おはようごさいます ryoh712さん。
ファイナンシャルプランナーの若宮光司です。
残念ながら今からさかのぼって申告をすることはできません。
一般の贈与税申告も相続時清算課税制度の贈与申告どちらも受贈者(もらった人)が翌年の申告期限までに申告をしなければいけません。
お母さんが祖父さんから500万円もらったことを認識していて申告していなかったことにつき、税務署から指摘を受けた後に申告することについて、本税のほか無申告加算税、延滞税は免れません。
まして、相続時精算課税制度の贈与申告は、贈与者の将来の相続を前提に申告する制度であり、かつ納税者(ryoh712のお母さん)が贈与時に税務署に対してその選択届出書を提出している必要があります。 当時、そのような税務知識がなかったかもしれませんが法律はあったので選択しなかったことによる不利益は納税者自身が負わなければいけないのです。
今回のご相談のように、税務署から指摘を受けた後では、遡って有利な制度を選択することはできません。
ペナルティを最小限に抑えるためにも、少しでも不安な点があれば早めに専門家へ相談することをおすすめします。
相続の時効に関するよくある質問

最後に、相続の時効に関するよくある質問に回答します。疑問をお持ちの方は参考にしてください。
実際に時効が成立し除斥期間が経過していれば、税務署は新たに課税処分を行えないため、原則として納税に関する連絡が届くことはありません。
ただし、以下のような場合には例外的に連絡が届く可能性があります。
- 税金を払いすぎており、還付金が発生しているケース
- 納税者は「5年経過で時効成立」と考えていたが税務署側は「不正行為があったためまだ7年の期間内」と判断しているケース
特に注意が必要なのは後者です。納税者と税務署で除斥期間の認識にズレがあると、「時効だと思っていたのに連絡が来た」という事態が起こり得ます。
過去の贈与漏れなどを指摘されるケースもあるため、「時効だから関係ない」と自己判断して通知を無視するのは危険です。
万が一の認識違いを防ぐためにも、税務署から連絡があった場合は専門家を通じて内容を確認することをおすすめします。
相続人が複数いる場合でも、相続税の申告・納付義務は各相続人が個別に負うため、時効の成立もそれぞれの相続人ごとに判断されます。
相続放棄の期限も、各相続人が「相続開始を知った日」から3ヶ月と個別に起算されます。
遺産分割協議が長引いている場合でも、相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月で一律に到来するため、自身の期限を正確に把握して対応するのが大切です。
相続人全員が相続放棄をすると、相続人が存在しない状態となり、最終的に相続財産は国庫に帰属します。すぐに国のものになるわけではありません。
利害関係人が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、債権者への弁済手続きや特別縁故者への財産分与の検討を経て処理されます。
相続放棄後も、次の管理者が決まるまでは財産の管理責任が残る点に注意が必要です。
まとめ
この記事では、相続に関する8つの時効・期限と、期限を過ぎた場合の対処法について解説しました。
相続放棄は3ヶ月、相続税申告は10ヶ月、相続登記は3年以内と、手続きによって期限が大きく異なります。
相続税の時効は善意で5年、悪意で7年ですが、令和6事務年度の税務調査では約82%の案件で申告漏れが指摘されており、時効成立を期待するのは現実的ではありません。
期限を把握したら、自分のケースに該当する手続きから優先的に進めていきましょう。
とくに相続放棄や遺留分侵害額請求は期限が短いため、早めの判断が欠かせません。
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