先進国債券は不要?資産運用で株式100%のリスク
「全世界株式やS&P500に投資していれば間違いない」
――近年の目覚ましい株価上昇を見ていると、そう考えるのも無理はありません。
特に新NISA(nisa)の開始以降、「つみたて投資枠」などを活用して、初心者でも手軽に資産運用を始めることが可能になりました。
多くの情報サイトや記事では「これ一本でOK」といった紹介がなされていますが、特定の商品(ファンド)だけに依存するリスクも考慮すべきです。
ここでは、先進国債券の必要性と、ご自身にあった選択かを探っていきます。
株式100%のリスク

S&P500や全世界株式に連動するインデックスファンドは、素晴らしいパフォーマンスを記録し続けています。※(参照|FREDS&P500系列)
現在、個人投資家に最も人気があるのは、低コストな投資信託や米国株のetfです。これらは非常に優秀な運用サービスですが、利回り(期待リターン)のみを重視して「全ツッパ」してしまうのは、相場急変時のダメージを無視していることと同義です。
そんな方が資産配分をせず、ポートフォリオを株式投資100%の資産運用を行う際の危険性や落とし穴を解説します。
株式100%の危険性
歴史は株式100%ポートフォリオの脆さを何度も証明してきました。
- リーマンショック(2008年)
- S&P500は最大で約57%も下落
- 資産が元の水準に戻るまで5年以上
- コロナショック(2020年)
- わずか1ヶ月で市場は約34%急落
- ITバブル崩壊後
- 回復までに10年以上を要した
資産が半分になった状態で、積立投資を継続できるでしょうか。
株式好調が招く債券不要論
ここ数年、S&P500や全世界株式は右肩上がりの成長を続け、多くの投資家に利益をもたらしました。
この輝かしい実績を前にすると、
「リターンが低い債券は、資産成長の邪魔」
という考えが生まれるのは当然です。
特に、投資効率を何よりも重視する方にとって、債券への投資は機会損失、つまり「無駄」に感じられるかもしれません。
「損をしたくない」という気持ちが強いほど、より高いリターンを求めて集中投資に傾いてしまうものです。
ですが、その輝かしいリターンの裏には、同等以上のリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。たとえS&P500と言えど、安全ではありません。
これが株式最大の罠で、落とし穴です。
以下に専門家プロファイルで資産運用についての悩みと、それのファイナンシャルプランナーの回答を見てみましょう。
専門家プロファイルでは、ファイナンシャルプランナーの森本 直人さんが、50代男性の資産配分の悩みについての相談に回答しています。
【質問(要約)】

現在 58歳 男性です
期待リタ-ンとリスクをおしえていただけないでしょうか?
私の希望リタ-ンは4%/年です。
単位 千円
現金 3,704
国内株 5,172
先進コク株 6,849
新興コク株 1,506
国内債券 14,021
先進国債券 1,554
ハイイ-ルド 381
新興国債券 1,550
海外リ-ド 957
コモデティ 894
計 36,588
資産配分が間違っていたらご指摘ください。
【回答(要約)】

ファイナンシャルプランナーの森本直人です。
推定リスク(標準偏差)は、年率8%程度かと思います。
今が割高か、割安かの判断、将来の予測なども加味する必要があります。
現実的には、例えば、米国の金利動向などマーケット環境の変化や、お仕事の状況などライフプランの変化に合わせて、資産配分を見直すのが、妥当に思います。
専門家プロファイルでは悩みを抱える方の相談に、専門家がアドバイスをくれます。気軽にネットから行える無料相談を利用してみるのも一つの手です。
資産運用の悩み、一人で抱え込まず専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
債券不要論の3つの理由と反論

「債券はもう古い」
「株式100%が最適解だ」
といった主張には、一見すると納得してしまいそうな理由がいくつか存在します。
しかし、その表面的な理由だけであなたの貴重な資産配分を決めてしまうのは、少し早いかもしれません。
理由1 株式よりリターンが劣る点
「債券不要論」の最も強力な根拠は、株式と比較した際のリターンの低さです。
また、債券を組み入れるとポートフォリオ全体の管理が複雑になり、手数料や信託報酬といったコスト面で損をするのではないか、という意見もあります。
しかし、最近では信託報酬が極めて低い債券ファンドも登場しており、ランキング上位の優良な商品を選べば、コストを抑えた分散投資が十分可能です。
特に楽天証券などの大手ネット証券では、マネーブリッジ等の便利なサービスが充実しており、投資信託やetfの購入時における手数料や信託報酬といった費用を最小限に抑えながら、効率的に運用を行うことが可能です。
確かに過去のデータを見れば、その主張は事実として認めざるを得ません。過去数十年の長期データを見ると、株式のリターンは債券を大きく上回ってきました。
例えば、S&P500の年率リターンが約10%に達した期間でも、先進国債券は2%〜4%程度に留まることが一般的です。
この数字の差だけを切り取れば、債券への投資は大きな機会損失を招いているように見えます。
投資とは、
いかにリスクをコントロールしながら、着実に目標資産を築いていくかのゲーム
債券は、
リターンという一面的な指標だけでは測れない、ポートフォリオ全体を安定させる重要な役割を担っている
| 資産クラス | 長期的な年率リターン(イメージ) |
|---|---|
| 全世界株式 | 約7%〜9% |
| 先進国債券 | 約2%〜4% |
※上記はあくまで一般的なイメージであり、投資する期間や市場環境によって大きく変動します。
理由2 為替リスク
日本に住む私たちが海外資産へ投資する以上、避けては通れないのが為替変動のリスクです。為替ヘッジを行わない先進国債券の円建て評価額は、主に2つの要素で決まります。
1つ目は、「現地通貨建ての債券価格」の変動です。
そして2つ目が、「外貨と日本円の為替レート」の変動です。
例えば、債券価格が順調に上昇していても、それ以上に急激な円高が進行すれば、円に換算した際の資産価値は減少してしまいます。
この為替の不確実性が、海外債券投資をためらわせる一因となっているのは事実です。
ただし、これはリスクであると同時にリターンの源泉でもあり、円安局面では逆に資産価値を押し上げる効果をもたらします。
理由3 分散効果の低下懸念
伝統的な資産運用理論では、債券は株式と逆の値動き(負の相関)をするため、ポートフォリオのリスクを低減させる「分散効果」があるとされてきました。
株価が下落する不況期には、安全資産とされる債券にお金が流れ込み価格が上昇する。
これが基本的な考え方です。この分散効果こそが、多くの投資家がポートフォリオに債券を組み入れる最大の理由でした。
しかし、この関係性は絶対的なものではありません。
世界的な金融緩和や高インフレといった特殊な環境下では、株式と債券が同時に値下がりする「負の相関の崩壊」が観測されました。
この現象が「債券の分散効果はもう終わった」という懸念を生み出しています。
ですが、歴史を振り返れば、金融危機の際には債券が資産のクッション役を果たした局面が圧倒的に多いのもまた事実です
一時的な相関性の変化だけを捉えて、債券が持つ長期的な価値を見失うのは賢明とは言えません。
債券がもたらす3つの実利と効率性

実は、債券をポートフォリオに加えることで得られる「実利」は、あなたの資産形成をより堅牢で効率的なものに変えてくれることです。
1.暴落時のクッション効果で損失抑制
「クッション」とは、債券を組み入れることで暴落時の下落幅を抑る機能を言います。
資産運用の最大の敵は、市場急落そのものよりも、
「恐怖で売ってしまい回復局面のリターンを取り逃がすこと」
債券は株式と値動きが異なり、暴落時に比較的価格が安定しやすいため、ポートフォリオ全体のダメージを和らげます。
例えば、株式100%のポートフォリオが暴落で50%下落する場面を想像してみてください。
資産の20%を債券にしていた場合、債券価格が安定または上昇することで、ポートフォリオ全体の下落率を40%程度に抑制できる可能性があります。
この「クッション効果」は、資産の目減りを物理的に抑えるための精神的な安定剤としても機能します。
下落幅が小さければ、結果的に資産が元の水準に戻るまでの時間を短縮できるのです。
2.債権を利用して、投資のリバランス
多くの人が「資産配分の調整」と聞くと、地味で退屈な作業を思い浮かべるかもしれません。
- リバランスとは、あらかじめ決めた資産配分比率(例:株式80%、債券20%)に戻す作業を指す
- それは、投資家が最も苦手とする「安く買って、高く売る」という理想的な行動を、感情を排して機械的に実行できる唯一の方法
しかし、リバランスこそ、リターン向上を狙う「攻撃的な機能」です。
リバランスの方法:
株価が高騰した場合(クリックで表示)
- ポートフォリオに占める株式の比率が85%に上昇
- この時、増えすぎた株式(5%分)を売却
- その資金で、比率が低下した債券(15%)を買い増し、元の比率に戻す
- 価格が上がった資産を自動的に利益確定する行為
株価が暴落した場合(クリックで表示)
- 株式の比率が70%に低下
- この時、価値が相対的に上がった債券を一部売却
- その資金で、割安になった株式を買う
- 市場が恐怖に包まれている中で、割安資産を仕込む
3.リスクリターンを最大化する|シャープレシオ
シャープレシオとは、
- 取ったリスク1単位あたり、どれだけのリターンを得られたかを示す指標
- 数値が高いほど、「コスパの良い」運用
例えば、株式100%のポートフォリオは高いリターンを期待できるが、その分価格変動リスクも増えます。
株式に債券を組み合わせたポートフォリオは、リターンはわずかに低下するかもしれません。
しかし、それと引き換えにシャープレシオの上昇がみられます。効率性を重視する投資家が本当に注目すべきは、単純なリターンではなく、
取ったリスクに見合うリターンが得られているか
その「投資のコストパフォーマンス」を測る指標がシャープレシオで、債券投資はその安定性を高める筆頭にあります。
債券が必要か判断する基準

NISAだけでなく、iDeCo(ideco)で老後資金を準備している者にとっても、債券の役割は重要です。
運用期間が短くなる後半戦では、資産を「増やす」から「守る」へ型を変える必要があります。 過去の投資経験にかかわらず、暴落時にパニックにならずに運用を継続するためには、一定の債券(安全資産)を持つことの重要性を理解しておくべきです。
債券不要な投資家タイプ(超少数派)
投資の正解は一つではありません。以下のチェックリストは、あなたが「債券不要論」を真に受けてもよい「超少数派」に当てはまるかを見極めるための試金石です。
チェックリストを表示
- 投資期間
- 今後20年以上にわたり、投資資金を引き出す予定が一切ない。
- リスク許容度
- 資産が50%以上下落しても、精神的に動揺せず普段通りの生活を送れる。
- 追加投資力
- 暴落時に、生活防衛資金とは別に数百万単位の追加資金を躊躇なく投入できる。
- 精神的耐性
- ポートフォリオの評価額が数年間マイナスでも、見ずに放置できる。
- 家庭の同意
- 暴落による資産減少を家族に説明し、納得させられる絶対的な自信がある。
- 感情の制御
- 市場の熱狂や悲観に惑わされず、自らの投資ルールを機械的に守り通せる。
- 長期低迷への覚悟
- 資産が回復するまで10年以上かかる可能性を現実として受け入れている。
もし、これらの項目すべてに「はい」と答えれる場合、あなたの資産形成に債券は不要な可能性が高いでしょう。
債券を取り入れたい投資家タイプ
一方で、多くの堅実な投資家にとって、債券はポートフォリオの安定性を高め、精神的な負担を和らげる重要な役割を果たします。
特に、以下のような考えを持つ方は、債券の組み入れを積極的に検討する価値があります。
チェックリストを表示
- 出口戦略
- 5〜10年以内に資産を使う予定があり、守りの運用も意識し始めている。
- 安定性重視
- 一時的な大きなリターンよりも、着実な資産成長を好む。
- リスク回避
- 暴落時の資産減少をできるだけマイルドにしたいと考えている。
- 精神的安定
- 日々の価格変動に一喜一憂せず、心穏やかに投資を続けたい。
- 狼狽売り防止
- 暴落時に慌てて売却してしまう自分の性格を理解している。
- ほったらかし運用
- 複雑な市場分析に時間をかけず、シンプルな資産配分で運用したい。
- 機械的な取引
- リバランス機能(資産配分の調整)を活用し、合理的な投資判断を自動化したい。
これらの項目に一つでも当てはまるなら、債券はあなたの資産運用にきっと活躍してくれるはずです。
失敗しないための「債券選び」と運用のステップ
債券投資を具体的に検討する際は、以下のステップを参考にしてください。
1.運用の「方針」を固める 債券には大きく分けて「国内債券」と「外国債券」があります。リスクを最小限に抑え、元本の安全性を最優先するなら国内の国債、一定の利回りを期待するなら先進国債券といったように、自分の方針に合ったものを選びましょう。
2.適切な「選び方」を知る 初心者の方には、個別の債券を直接買うよりも、複数の債券に分散投資してくれる投資信託やetfを通じた購入がおすすめです。楽天証券などの主要なネット証券であれば、検索機能を使って、手数料や信託報酬といった費用が低いファンドを簡単に比較できます。自分の資産状況と同じ目線で、最適な口座(nisaやideco)を選び、運用を行うのが賢い選択です。
3.「マネー」の置き場所を最適化する 債券は金利上昇局面で価格が下がってしまう性質を持っていますが、株式以外の資産を適切に組み入れることで、ポートフォリオ全体のバランスが整います。将来の自分に向けた「先」への投資として、どの程度の積立(つみたて)額が適切か、あらかじめ資産額や購入金額のポイントを一覧などで整理して知っておくことが、長期投資を成功させる第一歩です。
まとめ
近年の株式市場の好調ぶりを見て「債券は不要」と結論づけるのは、暴落時のリスクや回復にかかる「時間のコスト」を見過ごす危険な判断です。
債券は株価暴落時に、あなたの資産を守るクッションとなります。
「リバランス」という仕組みを通じて、高くなった資産を売り、安くなった資産を買うという理想的な投資行動を機械的に実現させてくれる、攻めの側面も持ち合わせています。
それでもなぜ債券が必要なのか、あるいは自分の配分が適切か別の視点からのアドバイスが欲しい方は、一度専門家に相談してみてはいかがでしょう。 専門家プロファイルでは、悩みを持つ方の登録を受け付けており、個別の相談にプロが回答してくれます。

